第4章 広い背中
「おい、後ろの奴に用があるんだ。大人しく差し出せば痛い目に遭わずに済むぞ」
「……断る」
五人の浪士に囲まれた状況でも、山崎さんは凛とした声で答えた。
「なら……痛い目に遭って貰おうじゃないか」
シャキン――と向けられた刀。息を吸うのも苦しいくらいに張りつめた空気の中……それは唐突に始まった。
「おらぁ‼」
「はぁ‼」
「うわっ!?」
京の細い路地に怒号が響き渡る。
山崎さんはどこから出したのか、黒い小さな刃物で応戦していた。……まるで、忍者のように。
たった一人で五人を相手にして、引けを取らない。
それくらい山崎さんは強かった。しかし――
「っ‼ 山崎さん‼」
一瞬の隙をついて背後に回った浪士が、刀を振り上げる。
それを見た途端、体が勝手に動いて――
腕に焼け付くような鋭い痛みが走り抜けた。