第4章 広い背中
「いくら傷が治ると言っても、痛みは感じるのだろう? 俺は君に痛い思いをしてほしくないんだ。……加えて君は女性だ。例え一時的であったとしても、傷をつけるようなことはしない方がいい」
「……ありがとうございます」
そんな風に思って下さっているなんて、想像もしていなかった。
化け物だって言われたって、仕方ないのに……
一人の人として、として見てくれるのが、こんなに嬉しいなんて思ってもいなかった。
滲む涙を見せないように下を向いていると、「帰るぞ」と山崎さんが歩き出したので、慌てて後を追う。
一歩後ろから見た山崎さんの背中は、いつもより広く、大きく見えた気がする。
了