第1章 愛の海鮮丼
こんなダウニーは初めてで、喜ばしいはずなのになんだか不安な気持ちが拭えない。
「ほんとほんと。その代わり、もうタコなんかに会っちゃだめだからネ」
「え」
此処に着て間もない頃に地下世界で戦い、勝利し、和解した今ではすっかり親しくなった彼らとの縁を断ち切れと言われるなどと露にも思っておらず、言葉を失った。
「だってさあ、チャン、バトル嫌なんだよね?」
「う、うん。うあーってなるの…好きじゃない」
「タコってインクリング的に敵じゃん?うあーってされっかもしれないよね。オレ、嫌だなー、チャンがうあーってなんの」
「でもっ…!」
反論しようとするが、近距離に近付いた彼に驚き、視界に彼の目ばかりが映る。
「ねえ、チャン」
「…」
「なぁんにも、怖い事なんてないからサ」
「んぐっ!????」
強制的に突っ込まれた"ナニか"がクチに苦味を蔓延させる。
反射的に吐き出そうとするが、クチをすっかり塞がれてそれも叶わず、暴れている内に飲み込んでしまった。
「げほっげほっ!!…なに…?」
「これでチャンはオレのお嫁さんだから」
「え?ごほっ…なに?」
急激な目眩により、焦点が定まらない。
彼の声がエコーがかったように脳味噌に響く。
「サザエ、美味しかったデショ?」