第10章 夏風
車が走り出してからまもなく、隣に座ってる矢吹くんとの距離が近すぎて、テンパりながらなんとかイヤホンで音楽を聴く。
私が何ヶ月か前に買ったお気に入りの小説が、先月からドラマ化された主題歌。
夏の爽やかさを彷彿とさせるその曲は、窓から見える夏の景色によく似合ってる。
【キミの横顔になびく潮風
夏の暑さを忘れさせてくれる
キミの笑い声が
夏の喧騒をかき消してくれる
この夏が永遠であればいいのに】
ひと夏の恋をテーマにしたこの曲も、私のお気に入り。
「…なに聞いてんの?」
「!!//」
曲に耳をすませて、ほんの一瞬目を閉じて開いたら、矢吹くんの顔がドアップだった。
「や、や、矢吹くん!!///」
ど、ど、どどどうしよう?!
近過ぎだよ!!//;;;;
慌てて顔を逸らす。
すると矢吹くんは、私の右耳にささっているイヤホンを手に取り、
なんと、、
次の瞬間、自分の左耳へと入れた。
……!///
驚き過ぎて、言葉すら出てこない。
どうすればーー!///;;;
私がテンパっているのに気がついていないのか、矢吹くんは、、
「…この曲、…俺も好き。/」
なんて、頬を赤らめて言うもんだから…/
私の思考は、一時停止した。//