第7章 後悔は、先には立ってくれない。
「お姉ちゃんの浴衣、可愛かったなぁ…………」
やっぱり、モデルかな?
着る人間が変わると………………
なんてね、気にしたって今更しょうがない。
お姉ちゃんは、亡くなったお母さん似のシャープな顔立ち。
私は、お父さん似のやや丸めな顔立ち。
産まれた時点で負けてるからな。
でも、浴衣は負けてないはず。
風鈴が散らばるこのデザインは、風流が感じられて、とても綺麗なデザインだと思う。
月のカタチの簪を挿したら、セット完了。
「ふぅ……」
笠松先輩には、【行けない】とのメールを返した。
謝罪マークも、たくさん付けて。
決して、先輩のせいではない。
すべてはそう。
……私の心が、
まだ、あのことを忘れられていないから。
大丈夫。
先輩なら、きっと可愛い彼女とか、そのうち出来るだろうし。
……ほんの少し、胸が痛むけれど、
大丈夫。
先輩なら、大丈夫だ。
先輩は、とても強い人だってことを、私は知っている。
試合が始まる前、いつも応援席を見てからぐっと瞳を閉じて、精悍な顔つきに変わることも。
敗戦の悔しさを、早朝の体育館で、独り、噛み締めていたことも。
部活終了時間になっても、しょっちゅう、誰よりも遅くまで自主練していることも。
いつも、直接話しかけることはできなくても、私が見てきた先輩だ。
……笠松先輩なら、大丈夫。