第10章 前に進んで
黒子side
何とか彼らに理由をつけて桃井さんと共にストバスコートへ向かうと、赤司くんが1人で地面に膝をついていた
「赤司君?」
「赤司君、名前ちゃん、は?」
「…消えたよ。緑間達は?」
「火神君に任せてきました」
「…そうか」
彼は膝をついたまま動こうとせず、手に持っている何かを凝視していた。それが何なのかと見ようと回ると、ボクが名前さんにあげたミサンガが手に乗っていた
「…それ」
「名前が消えてから、コートに落ちていたんだ。それからずっと…音を発していてね」
彼の手に乗っているミサンガは彼が揺らしているわけでも、風が吹いているわけでもないのに鈴が揺れて鳴っていた
ミサンガから赤司君は視線を動かそうとせず、そのままボクらに話を始めた
「…名前が言っていた」
「…?」
「…「もうこの世界には来れないかもしれない」って」
「うそ…っ、!名前ちゃんまた会えるって言ってたよ!?」
「それに関して、謝っていたよ」
「何で…そんな大事な事言わなかったの…」
「…オレに名前は「忘れて、前に進んで」と言って、押して外に出したんだ。それから割れて…消えたんだ」
「割れ…た?」
「透けて、消えるじゃないんですか?」
「いや…割れたよ」
彼の話に「そうですか」とボクは返事をして、彼女が何をしたかったのかを考えていた。それよりも、赤司君になぜ記憶が残っているのかボクは聞きたい…けど、それはきっと今から話してくれる雰囲気を、悟った
「あと1つ、理由はわからないんだが…恐らく名前は、自らか時間切れで消えた」
「自ら…ですか?」
「オレは名前に押されて倒れた…が、倒れただけで外には出ていない。ならオレがいる限り名前は消えないはずなんだろう?」
「何で…名前ちゃんに自ら消える必要があったの?」
「…さあな」
その答えはボクがいくら考えても出てくるわけがなく、ただ謎が増えただけだった
赤司君からの話の数秒後、赤司君の記憶が残っていることにボクはようやく気がついた
それについて詳しく聞こうとすると、赤司君は「お前らに頼みがある」とこっちを向いていた