第10章 前に進んで
「…黒子、1つ頼みがある」
「…なんですか赤司くん」
「ここから出たら、オレと名前の2人きりにしてくれないか」
テツヤと征十郎と、あたしの3人だけとなった時に征十郎はいつもと何ら変わらない声色で言った
それにテツヤは「またですか君は…」と中学の時のことを思い出したのか溜め息を吐いてから「覚えてたら、ですからね」と引き受けた
「…礼を言うよ」
「テ、ツヤ」
「また会えるんでしょう?」
「…うん」
「じゃあ名前さん、またね。です」
そう言ったテツヤはごく普通に外に出て立ち止まり、振り返った
「…それじゃあ皆連れて行ってきますね」
「!!」
「…ああ、頼むよ」
そしてテツヤはここを離れるためになのか彼らと話を始め、足を進めてどこかへ向かった
さつきだけが不安そうにこちらを見ていて、それがヤケに眼に焼き付いた
「…テツヤは覚えて、いるのかな」
「なぜそう思うんだい?」
「ただストバスコートから離れる。ってことだけ覚えてるかもしれないし…」
「何でお前は変にネガティブなんだ。もっと前向きに考えろ」
「…うん、そうだよね」
言う通りだと思って征十郎に笑うと彼はなぜか泣きそうな表情をしていて、それを見て見ぬフリをした
そしてフェンスの外を見て、口を開いた
「ここから出れば征十郎もあたしのこと、忘れちゃうんだよね」
「…ああ、そうだね」
「寂しいなぁ…」
「でもまた…会えるんだろう?」
「…それについて、話があるの」
そう言ってから彼の顔を見ながら話をしようかと思ったが、どうしても胸がきつく、痛くなってしまって、彼の顔を見ずに話す方法として彼に正面から抱きついた