第10章 前に進んで
「…次覚えてるとしたらー…ミドちん?」
「でも黄瀬君が覚えていないならその可能性はないに等しいですし…」
「桃井の時に思ったが…そもそも何故外に出る前提で話をしているのだよ。オレ達が外にでなければ苗字は消えないしオレ達は忘れない。それならば…」
「…お前はいつも一歩惜しいな」
「なっ…何を言うんだ赤司!」
「まずこのままだと青峰と黄瀬、桃井と火神が放置されてしまい、誰も入れない。そして…名前がどうなるかわからない」
「…は?」
「お前は自分の事なのに最悪の事態まで考えないのか、もしこのままストバスコートに居続けたらすぐにでも消え…桃井と火神の記憶さえも飛ぶ可能性があるんだぞ」
「…そんな」
「じゃあボク達は、どうすればいいんですか…」
テツヤの問いに答えはきっと出ている。それに敢えて誰も答えず、その雰囲気に下唇を噛み締めた
「もう、いいよ」
「名前さん…?」
「あきらめて…外出て、いいから」
「…何言ってるんだのだよ苗字」
「諦めるなって、名前ちんらしくないよー?」
「…緑間、紫原」
目の前に立った彼らの言葉にこぼれそうになる涙を透けている手で拭うと、紫原はあたしの頭を撫で、緑間は照れ隠しなのか眼鏡をかけ直していた
そんな彼らの後ろではさつきが未だ泣き止んでおらず、大輝と涼太の困ったような顔、そっぽを向く火神が見えた
「…ごめん!」
そう叫んでから2人の事を全力で押すと彼らはバランスを保とうと足を一歩下げた
しかしそれでもバランスが取れなかった2人はもう一歩下がってから倒れた
「名前!何を…」
「…あれ、何でオレ倒れてんのー?」
「紫原、なぜお前はオレの上に倒れているのだよ早くどけ!」
「緑間君、紫原君、君たちもやっぱり…」
突き飛ばして外に出した彼らは当たり前のようにあたしのことを忘れて、どんどんと透けていく身体に比例して、罪悪感に潰されそうになって、涙が溢れそうになった