第10章 前に進んで
「んー…オレの記憶では知らないんスけど…オレのファンか何かっスか?
つーか緑間っち!それよりもこのガラスみたいなのなんスかいじめっスか!?」
「…それより、だぁ?」
次の瞬間、大輝は涼太の何かが頭にキタのか一瞬で涼太の首元を掴んでいた
「それよりってお前!…って、あ?」
「…青峰っち何で怒ってんスか?」
「何かムカついたから」
「ヒドッ!!」
「大ちゃん、きーちゃん…?」
「…黄瀬、青峰、おまえら…」
「多分だが、わかったのだよ」
「うん。このストバスコートのフェンスより先に出ると、名前ちんの事忘れちゃうんでしょー」
「あと…名前が透ける。かな」
その事実を目の前にあたしは涼太と大輝を見て目に涙を溜めながらも自分の手を見た。すると手は消えかかっており、何かへの悔しさに手を握りしめた
そんなあたしの隣でテツヤは少し悩むような素振りを見せてから、「…多分、桃井さんは忘れないと思います」と呟いた
「桃井さんは唯一ボク達の中で4月以降も覚えてた人ですから…もしここから出ても覚えていられると思います」
「でも、私が出たら名前ちゃん…消えちゃうよ?」
「…あたしはどうせ消えるんだから、いいよさつき。覚えててくれるでしょ?」
「…でも」
「大丈夫、また会えるよ」
そう笑うあたしにさつきは言い返す事ができなかったのか「…うん」と返事をして歩き出し、フェンスの外に出た
心中で彼女に謝りながらさつきを見ていると出入口で少し躊躇ってから、外に出てこっちを向こうと振り返った
「名前ちゃん…覚えてる…よ。大丈夫…」
「さつき…」
目元を押さえて泣き出すさつきに大輝と黄瀬は心配そうに話しかけていたけど、そもそもその行為自体が彼女の涙を誘ってるのではないかと思って罪悪感が膨らんだ