第10章 前に進んで
「ネックレス…?」
「ああ。安物だけどね」
「(征十郎が言うとそう聞こえないんですけど…)」
思わず溜め息を吐くと彼らは「バスケしようっス!」と言ってボールを持っている青峰の方へと集まり、試合を始めた
その様子をポケーと見つつネックレスを左手でいじっていると、さつきが隣に立った
「プレゼント…仕舞わないの?」
「あ、うん。仕舞う」
「名前ちゃん…私があげた写真立て、使ってくれる?」
「?もちろん」
「みんなからもらったプレゼント…捨てない?」
「…どうしたのさつき」
「名前ちゃんまだ、消えない?」
さつきからの問いに答えられず黙っていると、「そうだよね、名前ちゃんも分かんないよね…」と下を向いた
何となく重い雰囲気にどうすればいいのか悩んでいると大輝が「おい!どっちか得点係やってくんねー!?」と叫び、さつきは「はーい!」と返事をしてからストバスの方に走り出した
その様子をあたしは溜め息を吐いてからフェンスによりかかり、腕を組んだ。…今の流れは、似た経験がある
帝光の時消える前に体育館でしたやり取り…で、来た順も、物をくれるのも同じだ
ただ彼らにねだってないのに物をもらったことと、あたしが彼らに何も返していないこと、まだこっちに来て透けていないこと、室内じゃないことが違うけども…だけど、もし、もしこれが偶然じゃないのならばあたしは今日、消える
ただ今まで消えたのかたまたま室内だっただけで、今回は外なのかもしれない。これから少しずつ消えかけていって最後に跡形もなく、消えるのかもしれない…でも1番気になるのはそこじゃない
これ以上「黒子のバスケ」に原作は、ない
「…消えたくないなぁ」
そう呟いた言葉は小さすぎて彼らのドリブルの音によってかきけされ、あたしの耳に届くか届かないかの声だった
「名前っち!一緒にバスケしよーっス!」
「え、あ、おう!」
そう誘われたのは意外。といえば嘘になるが不意をつかれ声が変だったが、彼らに向かって笑ってからベンチに荷物を置いて、ボールを奪おうと走り出した