第6章 「ゾーン」と「模倣」
しかし彼の前にはシルバーが立っており、[いかすか…ブッ潰してやる!!]と意気込んでいた
だが黄瀬は何も焦る様子はなく、「あーあ…ったく…流れ的にそうなっちゃったとはいえ、ヘコむっスわーまさかこんな損な役回りやるはめになろうとは」と考えながら、青峰の模倣をしてシルバーを抜いた
[コイツ…なんだ!?青峰のキレを再現しているだけじゃねぇ、元の速さが上がっていやがる…!?]
「(けどイヤってわけじゃない。それが最善ならためらったりするもんか…)」
[がぁあ!!]
「うわっ…まさか…まだ追いつくのか…!?シルバー!!」
「(やってやる!)」
そう思いながらダンクを決めようとする黄瀬の脳裏には数日前にした笠松都の会話が映っていた
それは彼が練習中に笠松に電話を掛けたことから始まった
「モシモシ、おう黄瀬か。どうした?」
「どうしたって…イヤこの前の試合最悪な奴らだったじゃないスか。様子が気になったっつーか…」
「なんだそんな事か。今ちょうど岡村とメシ食ってるよ、フツーに。」
どうやら笠松と岡村は大学が近いらしく、本当に普通にご飯を食べていた
それを聞いた黄瀬は意外だったのか、黙り込んだ
「「キセキの世代」とバスケやってきたんだぞ、今さら実力差にいちいち打ちひしがれたりするかよ
…ただ、とにかく悔しかった。俺たちStrkyがバカにされた事より、お前らとやってきたバスケの全てをバカにされた事が、今吉達も同じ事を言ってたよ。
聞いたぜ…再戦するんだろ?だったらこればっかりは頼むぜ。勝ってくれ。仇を取るためなんかじゃなく、俺たちが今までやってきたバスケを証明する為に」
そう言った笠松の声は周りにも聞こえていたのかやけに体育館が静かで、彼らの記憶によく覚えている
そして黄瀬はそれを思い出して「勝つ為ならなんだってやってやる!!」と思いながら「ぬぅぅあ…らあ!!」とシルバーを吹っ飛ばしてダンクを決めた