第5章 点差
Jabberwockボールから再開された後半戦、ナッシュの今までと違う雰囲気にVORPALSWORDSは目を見開き、マークである黄瀬は悪寒を感じて身体を低くした
「(来る…!ナッシュのヤロー、明らかに前半とは雰囲気が違え…!!)」
「(黄瀬もそれは感じとってる。一気に集中力全開の最警戒モードに入った…!)」
全員が2人のことを見ており、黄瀬が目を見開きボールを見ていたのにも関わらず、気づくと黄瀬の横で何かが通り、ボールが7番へと回っていた
「なっ…!?」
「(黄瀬ちんは今間違いなく全神経張りつめて備えてた)」
「(なのに反応すらできねぇだと!?)」
青峰が舌打ちしつつ7番のシュートをブロックしようとするも届かず、ゴールを許してしまった
「うわああ決まった!?なんだ今のパスは!?」
「一瞬でボールがフリーの選手に…まるで瞬間移動だ!!」
「ぐっ…(速いとかそういうレベルじゃない。全く見えなかった…!!)」
彼が何をしたのかと誰もが考えていると赤司がベンチで説明を始め、聞いたベンチのメンバーは「予備動作が…ない…!?」と赤司を見て目を見開いた
「人が速く動いたり大きな力を出したりしようとすればその直前必ず反動や勢いをつける為の動きが入る。それが予備動作だ
高速スポーツの攻防は、相手の動きを見てから反応するんじゃ遅い。わずかな予備動作を見逃さず、それに反応しなければ間に合わない
だがナッシュにはその予備動作が全くない
ベンチのオレ達にはかろうじて見えたが、マークしていた黄瀬はもちろん、他の4人も全く見えていなかったはずだ」
「なっ…(それってつまり…絶対に防げないパスってことじゃねーのか…!?)」
「(だとしたら…妙だな。ストリート選手らしくねぇ。予備動作をなくすなんてセンスだけじゃムリだ
緻密なフォームチェックをしながら基本動作の膨大な反復練習がいるはず
考え方も派手な動きを入れたがるストリートとは真逆と言っていい。むしろ幼少期からクラブ・部活で優れた指導者についていたバスケエリートの技術だ…!)」