白い小悪魔は誰のもの?~secondseason~
第24章 ★灰色の黄色の交戦★
氷室『っ...』
『あっ...痛かった?』
氷室『少し滲みただけさ、大丈夫。にしても用意が良いんだね』
『ウチの子達はよく怪我するし、常に持ち合わせるんだ。本当は医務室の人にやってもらう方がいいんだけど...ごめんなさい』
氷室『いや、寧ろレイラにされた方が俺は嬉しいよ。好きな子に沢山触れてもらえるなら...ね。でも、こんな状態じゃ格好つかないな....』
『.....』
氷室『レイラ?』
不意に治療の手を止め、顔を俯かせる零蘭に氷室は怪訝そうな面持ちで見つめる。
『辰也、ごめんなさい。昔の身内が貴方にこんな怪我をさせてしまって』
氷室『君は全く悪くない。それに、謝るのは俺の方だ。君を守れなかった...すまない』
『辰也...』
氷室『手当て、続けてくれるかい?』
『うん...』
氷室の柔らかな笑みに釣られるように、小さく笑みを浮かべると治療の手を再開した。微かな血の滲みを止血し、腫れているところをそっと冷やしたりと施している内に徐々に氷室の表情が楽になっていく。
『よし、腫れが引いた後は温める方がいいし、安静にするのが1番だね』
氷室『ありがとう。痛みが和らいだよ』
頭を撫でると嬉しそうに目を細める彼女に愛おしさが込み上げ、その手から道具箱を取り上げ近くの棚に置くと、突然の事に少し驚いた表情の零蘭を優しく抱き締めた。
氷室『おいで』
『ん...くっついて大丈夫?痛くない?』
氷室『平気だよ。今は君の温もりが恋しいんだ』
『辰也...』
そっと背中に手を回すと心なしか抱き締める力が僅かに強まった。鼓動と息づかい、全てがはっきりと聞こえるほど静かな時間だった。
氷室『すまないレイラ。試合中、何度も君を怖がらせてしまった。いくらタイガに敵意を持っていたとはいえ、あそこまで感情的になるとは自分でも思わなかったよ』
『正直ビックリした...私の知ってる辰也はいつもクールで優しくて、綺麗な笑顔で私を包んでくれる王子様みたいな人だったから』
氷室『あれも、俺なんだよ。嫌いになったかな?』
『そんな事ない...私が知らなかっただけよ。あの殺気混じりの闘志を燃やす辰也も、氷室辰也なのね』