白い小悪魔は誰のもの?~secondseason~
第23章 ★紫色との大戦★
火神の猛攻は止まらず、氷室と対峙した際には彼のそれより質の高いフェイクを見せ、紫原と対峙すれば滞空力で圧倒し、またも点を決めた。
残り3分の所で、たまらず陽泉がタイムアウトを取った。流れが来て士気が上がっている誠凛とは裏腹に、陽泉では不穏な空気が漂っていた。
福井『は?おい、今なんつった?』
紫原『だーからー、もういいや俺やーめた。交代してよ』
福井『っざけんな!いきなり何考えてんだテメェ!』
紫原『だってつまんなくなっちゃったんだもん』
岡村『今お前が抜けたら勝てるもんも勝てなくなる。負けてもいいっちゅうんか貴様』
紫原『うん、だってもう誰も火神止めらんないじゃん』
福井や岡村の言葉にもまるで知らないとでも言うように気だるげに返す紫原に、次の瞬間思いもしなかった相手から強烈な右ストレートが叩き込まれた。
氷室だった。紫原の胸ぐらを掴むと、誠凛にまで聞こえる程に声を荒げる。
氷室『いい加減にしろアツシ!まだ勝負は終わってない!!』
紫原『ってーな。そういう熱血っぽいのが1番ウザいんだけど。そもそも室ちんなんて俺よりアイツに歯が立たないじゃん。才能が違うって分かんないの?』
『.....テツヤ、手握ってくれる?』
黒子『はい....大丈夫ですよ』
『...ありがとう』
立花『お姉様、さっきのそれ以前って...』
『ゾーンに入れるのは選ばれた人だけよ。辰也には実力がある...けれどキセキの世代を近くで見てきた私は分かってしまった。それでも秀才止まりだって事に...っ』
今にも泣いてしまいそうな表情で言葉を紡ぐ零蘭の肩をそっと黒子は抱き寄せた。
青峰『いくら強くてもあくまで凡人の延長線でしかねぇ。どれだけ近づこうが決してこっち側に来ることはねぇ』
氷室『...ってるよ。分かってるよそんなことは。ずっと、ずっとアイツの才能に嫉妬してきたんだからな。なのに、俺が喉から手が出るほど欲してる物を持ってるお前が、あっさり勝負を投げ出そうとしてる...怒りで気が変になるぜ、いい加減』
紫原の頬に熱い物が落ちて伝っていく。口許は笑っているのに目は余りにも悲しく、彼の体は震えていた。