第5章 桜並木に包まれて
近藤side
このままいけば確実に沖田は殺しにかかる。
それは防がなくてはならない。
松平はそうだな、と言葉を紡ぎ、近藤の言う通り、中に入っていく。
土方が静かに沖田をおさめると、歯を食い縛りながら沖田もついてきた。
近藤はその事にホッとし、土方に軽く頭を下げる。土方も渋い顔をしながら首を縦にふった。
そうして近藤は松平に続いて中に入っていく。
「いらっしゃいませー。」
髪をあげて、華やかな着物に身を包む女性が現れる。その姿は千里の姿とは違いすぎて。そうなったのは今の状況と過去のせいだろう。
綺麗な着物、好きだったのに……。
唇を噛んで、拳を握る近藤。
その姿を人知れず見つめる松平がいた。
「お酒、いれますよ。」
「え?あ、ありがとうございます、お妙さん。」
いつもは近づいてこないお妙が自然な動作でお酒をつぐ。
その事に驚きつつ、礼を言った。
「全く、最近こいつなかなか来ねぇだろ?」
松平は二人の間に会話を挟めてくる。
その瞳は細く、怪しく光っていた。
「違う女にお熱いんだとよー。」
「ちょっ……とっつぁん!」
慌てて口を塞ぐが、時既に遅し。
沖田は今にも噛み殺しそうな勢いで松平を睨み、お妙は驚きで目を見開いたあと、嫌そうにふんっと顎をそらした。
それに気がついているのかいないのか、松平は続ける。
「黒髪の美人らしくてなー。」
「ちょ、ほんとに、とっつぁんやめ……。」
沖田の持っているグラスに力を込める。
あれ以上強くしたら、グラスは割れ、手に怪我をおってしまうだろう。
土方はその事に気が付いていないのか、自分を抑えるのに必死だ。
このままじゃ__________……。
近藤が最悪の場合を覚悟した、その時。
「私だって男の人に言い寄られたんですからっ!」
顔を赤く染めて、子供のように腰に手を当てて吠えるお妙の声がその場に響いた。