第5章 桜並木に包まれて
沖田side
「意外にも着物で移動したのか……それとも監視カメラの位置を理解しているのか……。全く分かりません。」
ちらり、と山崎が三番隊隊長、斎藤終をみた。
彼もこの作業に参加しており、幾つかの監視カメラを凝視している。
「斎藤さん、あんパン要りませんですかィ?」
余分に買ってきたあんパンを、必死に探してくれている斎藤に差し出す。
彼は画面を止めてから此方を見て、あんパンを受け取った。
山崎はすでに食べ始めている。
自前の牛乳を飲みながら、むしゃむしゃと音をたてて。
よくよく見れば、どちらの目も少し充血していた。斎藤は慣れているわけではないのか、隈まで作っている。
沖田は無力な自分に腹が立った。
「少し、変わりまさァ。」
斎藤の隣に座り、画面を動かそうとする。
しかしやんわりと制止された。
斎藤が首を横にふり、目だけで訴えてくる。
「……沖田隊長、僕たちが必ず見つけますから。」
近くであんパンを頬張っていた山崎が肩を引いてくる。申し訳なさそうではあったが、有無は言わせない口調だ。
口のはしにあんパンつけてる奴に説得力がねぇぞ。
ため息をはきつつ、視線を斎藤に戻す。
斎藤は今度は縦に首をふった。
「何にも出来ないですかィ?」
「副長命令ですよ。動きたいときに動けない方が後悔しますよ。」
空笑いしながら山崎が楽しげに言う。
しかし直ぐに表情を引き締めた。
「頭下げられました、副長にも局長にも沖田隊長にも大切な人なんですよね。」
目を見開くと、山崎が真剣な瞳で沖田を見た。
「任せてください。絶対見つけて見せます。」
「山崎……。」
その時、後ろでカチッとクリック音が聞こえた。斎藤が画面を動かし始めたのだ。
斎藤の言葉は山崎と同じということなのだろう、背を向けて画面をにらんでいる。
「……頼みまさァ。」
「はい!」
喉に熱いものが込み上げてくる。
いつのまにか、こんな風に思ってくれる仲間がいることに。
_________総ちゃんの良さは皆が知ってる。だから総ちゃんが困ったときは助けてくれる人はいっぱいだよ!
千里、そうだな。
俺が気づいてないだけだった。
皆が俺を心配してくれている。
支えようとしてくれている。
でも千里。
_______お前も隣にいてほしいよ。