第5章 桜並木に包まれて
沖田side
千里と最悪な形で再開してから、沖田はきちんと仕事をこなすようになった。
そして、器物損害で苦情が入ることもなくなった。
「珍しいじゃねぇか。」
依然として千里の今の行動は分からない今、何か問題を起こして動けないようにしたくない、そんな沖田の心情を土方は理解していたが、理解していないフリにつとめていた。
だから時節、こんな言葉をかける。
案の定、ふて腐れたかのように唇をへの字に結んだ。
沖田は土方がそんな風に気遣っていることも分かっていたからだ。
余計な気遣いはいらない、そうつっぱねたいのはやまやまだが、心配なのは事実なのだろう。余計に何も言い返せない。
「……当たり前、でさァ。」
一言だけ答えてその場を土方に沖田は背を向ける。
しかし、土方はそれ以上何も言わなかった。
ただ、煙草をふかしただけ。
その事に安堵しながら、沖田は屯所の廊下を進んでいった。
「山崎。」
沖田は監察を得意とする、山崎に声をかけた。右手にあんパンをもって。
「沖田隊長。」
彼は少し驚いたように目を見開くが、沖田が来た理由を瞬時に理解したのか、静かに首を横にふった。
申し訳なさそうに、肩を縮めて。
「そうですかィ……。」
山崎は千里の共謀者を追っていた。
おそらく、と銀時が目を付けたビルから発砲した人物のことだ。
勿論深く千里と関わっているのだろう。
真選組は必死になってその男を探していた。
それしか、手がかりが存在していないから。
血眼になりながら、近くの監視カメラをあさり、怪しい人物がいないか操作している。
しかし、画面の前での長時間の作業は沖田には向いておらず、目を痛め、土方からその仕事をはずされた。
何度も食ってかかったが、「もし目を痛めたら動けるときに動けない、それでもいいのか。」と一喝され、日々こうして成果を土方づたいに聞くことになり、今に至る。
つまり、山崎と会うことに許可は貰っていない。そのせいで山崎は驚いたのだろう。
しかし沖田はここに来る途中に土方に会っている。恐らくここに来るのも見抜かれている。
その上で何もいってこなかったということは、暗黙の許可の印だった。