第1章 出逢い再び
千里side
外に向けていた視線を変えて隣にちょこんと可愛らしく体育座りをしたそよ姫に声をかける。
「ねぇ、そよ姫様って時計持ってる?」
「時計……ですか?」
「そう。腕時計とか。」
「すみません。持っていないです……。」
そーだよねー、と適当に相槌をうちながら内心軽く舌打ちをする。
いや、正直のところ時間がわからないのはどうでもいい。
だけど思っていた以上に相手側が手を打ってこない。
土方さん……深読みでもしてんのかな。
なら、やっかいだ。
相変わらずやりにくい相手で用心深い、と尊敬にも似た呆れから、ため息をはきつつ、自分を落ち着かせ冷静に考える。
まず、浸入口は二つ。
一つめは普通の扉。
二つ目は少し高いところにつけられた窓。
地下室へと続く階段は既に塞いできた。
挟み撃ちはされない。
問題は、坂田銀時。
先程外を見たときに確認はとれていた。
無論、神楽がいる時点で予測はしていたが。
彼は何を仕掛けてくるか分からない。
だから、仲間にしたかったのに。
あんなに簡単に断ってくるなんて。
千里は目を閉じ、全身で感じた。
脳裏に浮かぶのは愛しい家族の顔。
耳に甦るのは愛しい家族の声。
そこに真選組が微かに映るが、必死に打ち消す。暖かな彼等の思い出も所詮今は足枷にすぎない。
彼らはもう仲間ではない。
私の___________敵だ。
さぁ、午後2時10分前。
千里は刀を右手にかける。
私の強さはたかが知れてる。
けれど、この妖刀さえあれば。
私は。
千里は視線をゆっくりと扉に向け、まるで噛みつく様な、覚悟を決めた瞳で見据える。
____________無敵だ。