第4章 "雪螢"
.。o○物語
昔々その昔。
雪山の山頂に美しい娘がおりました。
しかし、見たものは殺される噂も流れておりましたので、見に行くものはいませんでした。
彼女は雪女だと噂されていたのです。
_________ある晩のことでした。
一人の若者が薬草を探しにいきましたが、雪山で遭難してしまったのです。
若者ははぁはぁと白い息をはきながら、寒さに震えていました。
もう自分はダメかもしれない……。
心のどこかで覚悟を決めた、その時でした。
誰?
白銀の地に、真っ黒な髪をもつ女が現れたのです。その事に驚きつつも、女の美しさに若者は目を惹かれました。
貴方は雪女ですか?
気が付くと、なんの作為もなく若者は質問していました。
そうですけれど、何か?
飄々と当たり前だとでも言うように、女は答えました。真っ白な肌には紅い唇がよく映えていました。
そうか……とても美しい。
最後に美人に看取られるなら……少しは楽になる。
若者は呟くように言いました。
冗談ではなく、本気で言ったのです。
女は目を見開き驚きました。
変な男。
そんな風に思いました。
同時に興味が沸いたのです。
私が助けてあげる。
そう言うと同時に女は吹雪を消しました。
ごうごうと吹いていた風は優しくなり、静けさを感じるくらい柔らかになりました。
若者は突然のことに唖然としましたが、なんとなく当たり前だと受け入れました。
恐怖は沸かず、ただ感謝だけが若者の心に生まれました。
ありがとう。
どういたしまして。
二人は微笑み合いました。
なんとなく、幸せを感じたのです。
それから女は若者を家へ連れていきました。
暖かいものは出せないので、薪を渡し、火をつけるよう指示して、少し距離をおきました。
若者は君は大丈夫なのか?そう問いましたが、女は自分の溶ける温度くらい理解していると言いました。
それを聞いて安心した男はゆっくりと火を起こし始めました。
少しすればオレンジ色の炎が男の体を暖め、凍えを癒してくれたのです。
二人はなにも話しませんでした。
けれど、心が寄り添う感覚を、そのひとときで味わったのです。
少しして若者は立ち去りましたが、雪女も若者もその日のことを忘れることなど、出来ませんでした。
一週間後、若者は雪女に会いに行きました。