第4章 "雪螢"
.。o○物語
また遭難したの?
冷たく雪女は言い放ちましたが、心のそこでは嬉しく思っていました。
今度は君に会いに来たんだ。
若者は柔らかく、顔をほころばせると、雪女もつられて笑いました。
バカな男。
雪女はそう言うと自分の手を若者に差し出しました。
若者はとても驚きました。
君が溶けてしまうのでは?
平気よ、この前も言ったでしょう?
自分の溶ける温度くらいわかっているわ。
そうか、よかった。
君が溶けてしまったら困るのでね。
……不思議な男。
同時に二人は吹き出しました。
こんな何でもないやり取りに、たしかなモノがあるのだと知ったのです。
そっと若者は雪女の手に触れました。
氷のように冷たいはずの手が暖かく感じました。
君は体温をもつのかい?
さぁ……?
けれど今私の手は暖かい気がするわ。
自分の手から伝わるはずのない鼓動が雪女には聞こえたのです。
隣に人がいる
なんて素敵なことなのでしょう。
雪女は口には出しませんでしたが、心の底からそうだと思いました。
一方若者も、こんな寒いところまで自分が足を運んだ意味に気がつくのです。
まだ出会ってまもない二人。
その想いは偶然か、必然か。
運命の歯車は悪戯に回ります。
本来なら必要とされない、二人の間に生まれた想い。
それはゆっくりと、ゆっくりと、形作られていきました。
あぁ、私
あぁ、俺
_________________この人が好き。