第4章 "雪螢"
千里side
白夜叉が府抜けていたから心配はしていたが、さすが真選組から毎度逃げているだけはある。
醸し出す雰囲気は真剣そのものだ。
「そなたらが我らの仲間になるのではダメなのか。」
「そうしたら俺達が失敗したときに困るでしょう?」
宗が口角をあげながら、言葉を紡ぐ。
大胆不敵なお仲間は、よほど桂という人物を信用していないみたいだ。
桂もその笑みに答えるかのように、数秒動かず、ただ黙って見つめていた。
睨んでいる、そうとも言うだろう。
どのくらいそうしていただろうか。
動いたのは桂だった。
「悪いが皆の者。席をはずしてはくれまいか。茶菓子を買ってきてくれ。」
有無を言わせない圧力で言う。
主の言葉に驚く一派の隊員。
目を見開き、納得いかない様子だった。
「この者が桂さんを襲う可能性だってあるでしょう。ご命令でも席は外せません。」
その中でも一番権限を持っているだろう者が、皆の言葉を代弁する。
瞳には不信感がちらつき、命令を聞くつもりは一片も無さそうだ。
「ではこうしよう、皆に休みを与える。」
「出来ません。」
即答かよ、千里は心の中で悪態をついた。宗には見破られ、肘で小突かれたが。
ふぅ、と桂はつまらなさそうにため息をつき、目を閉じた。
そして、ゆっくりと睫毛を揺らしながら目を開く。
ぞくり。
誰しもの背中に寒気が走った。
先程とはベツモノの雰囲気が千里達を飲み込む。
「私を誰だと思っている。」
この空間を支配するのは紛れもなく、彼。
それを再認識せざる終えないほど、肌に痛みを感じる声で桂は言った。
「この者達に負けるようなリーダーをお主たちは選んだのか。」
ぐっ、と隊員達が言葉につまる。
それは、絶対的な信頼が仇になった瞬間だった。
そしてこれを否定する選択肢など彼等にはない。
「……わかりました、饅頭を買ってきます。」
「うむ、苺大福をよろしく頼む。」
すごすごと不服そうな表情をし、千里達を一睨みした後、隊員達は出ていった。
後に残されたのは、桂と宗と千里だけ。宗と千里は警戒を最大限にする。
しかし、それに反して、桂は含みのある笑みをこぼし、
「さて、話してもらおう。貴様等の自信の根拠と隠し事をな。」
興味深そうに言葉を紡いだ。