第1章 出逢い再び
沖田side
その言葉に耳が反応する。
他の人も同様だったのか、少し驚いた表情を見せる。
てっきりそよ姫だけが誘拐犯とばったり会い、そのまま誘拐されたのだとばかりおもっていた。
「どういうことだ?」
土方が神楽と視線を合わせ、訝しげに問うた。
神楽も一旦目を伏せてからたどたどしく言葉を連ねていく。
「そよちゃんと、あそこの廃墟で隠れてたアル……。少しほこりっぽかったから…おばけでもでてきそうだナ、とかいって…怪談を話してアル……。」
そしたら……。
そこで言葉が切れ、肩を震わせた。
いたたまれなくなった沖田は視線だけを彼女から外し、耳だけ傾ける。
すすり泣く声がきれぎれに続く。
「……そしたら、いきなり変な女が声をかけてきて……。」
名を確かめたあと躊躇することなく刀を神楽に対して下ろしたと言う。
そのひょうしに傘を手放してしまったことも。
「なんとか避けたアル。けど、体勢を崩してそよちゃんから離れてしまったアル……。」
しかも、彼女は自分が夜兎族だと見抜き、口角をつり上げ笑ったと言う。
そして、そよ姫を庇うように神楽の前に立ち、斬りきかかったそうだ。
神楽こそ受け身はとったものの、相手の方が一枚上手で動きは早く、手慣れた様子だったらしい。
神楽も反撃をしかけ、拳を飛ばしたが、その腕を絡めとられ、投げられたと言う。
「右手がおれてます……。」
新八がみんなに見せるようにして神楽の手を取った。
痛々しく、何重にも包帯が巻かれている。
「そよちゃんがっ……そよちゃんがっ……っ……!私が弱かったからっ……っく……。」
このチャイナをいたも簡単に……。
ただもんじゃねェな……。
神楽が言うには女。そして腰まである黒髪。
最近出ている人斬りではないことは確かだ、と真選組の面々は思う。
ならば、何者だ。
「土方さん。相手は何を要求してるんでさァ?」
沖田は廃墟から視線をはずさす問うと、土方もまた廃墟を見据えるようにして答えた。
「要求は金だ。約1億。」