第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
沖田side
アイツは俺の"花"だった。
優しくて、気高くて、光を放ってて。
けれど綺麗な花には棘があって。
その刺は彼女の過去で。
アイツの過去を知ったとき頭が真っ白になって、守りたいと思って。
けれど、アイツは俺を求めなかった。
誰でもない、一番の愛を守るために。
____________________綺麗な丸い月が、絵の具をぶちまけたような、吸い込まれそうな夜空に浮かんでいる。
その月の明かりに照らされて、土方とミツバが二人で佇んでいた。沖田はそれを盗み見ていて。
先程、土方はミツバの想いを受け入れなかった。
今その場には、木の影に隠れた沖田と、立ち尽くすミツバ、そして背を向けて去っていく土方がいる。
沖田の頭の中は沢山の怒りと、焦りと、哀しみが混ざって、走ってそこから逃げた。
何故、受け入れない?
姉上のどこが悪いんでィ。
あんなに、あんなに好いてもらっているのに。
無茶苦茶に手足を動かしているせいか、すぐ息がきれる。それでも、はぁはぁと浅い呼吸を繰り返しながら沖田は走った。
近藤さんも姉上も、何でアイツがいいんだよ。
どこがいいんだよ。
子供らしい浅はかな考えだった。
けれど、あの頃には狡い、その表現を受け入れる余裕なんてなくて。
羨ましがったら終わりだと思っていたから。
精一杯意地を張って、つまらないやきもちを妬いているくせに、それをうまく伝えることなどプライドが許せなくて。
「千里……。」
ふと、その時浮かんだのは土方が現れてもなお、自分の中で好かれている自信があった千里だった。
ひまわりのように暖かな笑顔が、冷めきった心を照らしてくれる。
会いに行かなくては。
このとき昨日の事などさっぱり忘れてしまっていた。千里が戸惑っていることも、沖田は忘れていた。
やっぱり千里を連れていこう。
土方の野郎に見せつけてやろう。
それで自分なら好きな女を守れるところを見してやろう。
そんな、愛とは遠くかけ離れた醜い感情のまま。
だから、バチが当たったんだ。
こんな風に自分の力に溺れて、餓鬼のクセに守れるとほざいたのに。
何一つ、アイツの大切なものも、あいつ自身も守れなかった。