第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
沖田side
今日はその日によくにてる。
皆を照らす月の明かりはあの日にそっくりだ。
「それで、その、口論になったんでィ。」
まだ心の整理がついておらず、冷静に語ることが出来ないと思った沖田は、無理矢理話を終わらせた。
銀時も察しているのか、特に何も言ってこない。ただ、赤い顔をして目を閉じている。
聞いているのか聞いていないのかは定かではないが、それはどうでもいいような気がした。
どちらにせよ、もうだれも彼女のそれからの事を聞こうとはしない。
長い話で皆、それぞれ気が滅入ってしまっていたのだろう。
沖田は酒を手に取り、煽った。
喉に酸っぱく熱い塊が込み上げてくる。
「旦那ァ……あとでアイツと、アイツの姉のそれからの事を報告書で渡しまさァ……。本来なら違反だが……この中の誰も冷静になんか話せねェ。」
そう、冷静になれるはずもない。
感情的にならないはずがない。
「あァ……。」
小さな声を耳がとらえた。
酒のせいか掠れていて聞きにくかったが、その声は銀時の声だと沖田は確信していた。
なぁ、千里。
俺はお前を忘れようとして、過ごしてきやした。けど、そんな簡単なことじゃなかったですねィ。
忘れたと思っていやしたが、そう思い込んでいただけでした。
思い出せば、暖かい思い出が自分を弱くするような気がしてなからなかったんでさァ。
苦い思い出に向き合うことをやめてきたんでさァ。
……千里……話してェ。
ちゃんと、もう一度。
あのぬくもりを、感じたいんでさァ。
"幸せ"という名のぬくもりを。