第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
千里side
そう、殺したの。
痛む体を叩き起こして、近くにあった石を一人の男に投げつけた。命中はしなかったけど、うずくまった男から刀を取り上げた。その刀で無我夢中に目の前の人を切った。どれくらい斬っていいかわからなくて。お腹を斬って首を斬って足を斬って。私も斬られながら姉上を守りたいその一心で斬り続けた。
気がついたら泣きじゃくっている姉上がいた。掌を見ると赤く染まってて近くに男が上半身も下半身もばらばらになったまま動かなくなってて。
その時思ったの。
殺せた。
殺してやった。
私は姉上を護れたんだ。
じゃあ何で姉上は泣いてるんだろう。助かったのに、何で泣いてるの?
「ごめんね、傷つけてしまって、ごめんねっ……!!!!」
姉上、私、私は傷ついてなんかないよ。
傷ついてなんかないよ、姉上を護れたんだよ。
私は、傷ついてなんか__________……。
「泣かないで……あなたはわるくないっ……千里はお姉ちゃんを守ってくれたの……泣かないでっ……お姉ちゃんが守らなきゃいけなかったのにっ……。」
泣いてる……?私泣いてるの?
何で泣いてるの?どうして泣いてるの?
「う、あぁ……や……ぁ……。」
手がぬるぬるする。暖かい。
何で?どうして?
あれ……?何で泣いてるの?お姉ちゃんを守れたのにどうして泣いてるの?
「ごめんね。ごめんね……!」
何で姉上が謝るの?悪いのはあっちでしょ?姉上に酷いことしようとしたんだよ。
殺されて当たり前だったの。
__________________あれ……?
じゃあ、父上達は何で殺されたの?
酷いこと、したの?
「父上……は?母上は、どこ……?」
千里がそう言うと、くしゃりと、千鶴は顔を歪ませた。
強く強く抱き締められる。
これは現実なんだ。夢なんかじゃないんだ。
やっとそこで泣いていたのがわかった。
悲しいんじゃなかった。嬉しくもなかった。
何で自分が泣いているのか分からなかった。
ただ___________姉上が泣いている理由がわかった気がした。
_________________……私は人を殺したんだ。