第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
土方side
俺だってミツバを……ある意味見捨てた。
千里は俺たちに見捨てられなくてはならなかった。
付いてきて欲しかった、けど付いてきて欲しくなかった。
付いていきたかった、けど付いていけないかった。
似てるようで違う、俺と千里の気持ち。
相反しながら共鳴した気持ちは、土方には重たいものだった。
自分には彼女を止める権利など、なかったのだから。
__________________少しして、迷いながらも土方も千里を追いかけた。
仲間たちに俺たちに任せろ、そう言って。
外はどんよりとした重い黒い雲に覆われている。
少し走ると、直ぐに三人は見つかった。
千里は土の汚れも気にすることなく、しゃがみこんでおり、すぐ傍に沖田と近藤がいた。
それを確認し、ホッとした土方はそこで足を止める。
やはり、自分は行けないと思ったのだ。
耳を澄ませ、木の影に隠れながら言葉を待つ。
口火を切ったのは沖田だった。
「いきなりどうしたんでィ。」
千里は肩をびくり、と震わせ、嗚咽する。爪を地面に這わせながら、耐えるように。
「千里は来ないんですかィ?」
沖田が静かに、逃げを許さない真剣な声で問うのと同時に、優しく千里の手を取り、視線を絡める。
そうすれば、ここからでもくしゃくしゃなのが確認できるほど狼狽えている千里の顔が見えた。
「私は……。」
喉に痰がつまって喋りにくいのか、それとも声が震えているだけなのか。
何にせよ、儚くかき消えそうな声で、千里は言葉を紡ぐ。
「私は……守りたかっただけなの……。」
いきなりの言葉に三人は息を呑むが、口を挟むことなく、耳をすませる。
一字一句、聞き逃さないように。
完全な静寂が訪れとともに、一筋の水が頬を伝う。涙ではない。
しかしそれを気にすることはなく、千里は語り始め、土方、沖田、近藤は聞き始めた。
彼女達の過去を。
理不尽なまでにその生を終えた両親達のことを。
そして、彼女の答えを。