第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
土方side
外はとっぷりと日が暮れ、夜空にちりばめられた満天の星が、皆を照らした。
あぁ、そうだ、こんな日だった。
土方は胸がきゅっと絞られるような想いを抱き、こんな綺麗な夜に大切な人を振り払ったことを思い出す。
そして、総悟も。
時に愛は足枷にもなるだろう。
けれど透明で純粋で、美しいものだ。
その裏は邪心や、嫉妬や、醜い感情があったとしても。
_______________珍しく、道場で通っているもの全員が集まった。
近藤が集めたのだ。
皆それぞれ何か知らせがある。そう直感していた。
それが朗報なのか、悲報なのか。
思い当たることもない。
期待と不安が交錯した不思議な空間がそこには流れていた。
斜め前には想いを伝えたい、そう言った千里と、なかなか素直になれない憎らしい沖田がいる。
口喧嘩をしているところを見て、会話を盗み聞きすると、まだ伝えてないようだった。
呆れながらも近藤を土方は待つ。
それから五分たった後のこと。
近藤が遂に道場に現れたのだ。
いつもとは違う彼の雰囲気に、背筋になんとも言えないものがはしる。
彼は全員いることを確認させ、ゆっくりと、はっきりと言葉を紡いだ。
「江戸で一旗揚げよう。」
たった、一言。
けれどその言葉を理解するのに、数秒の時間を土方は要した。
江戸……?
回りも同じ反応で混乱している者が多く、近藤が放った言葉を反芻する。
しかし、静けさの後に来たものは興奮と期待に満ちたざわめきだった。
「江戸!?近藤さん!江戸ですか!?」
「あぁ、江戸で攘夷浪士に反抗する特別な警察組織を作るらしいんだ。俺たち芋侍にはちとキツいかもしれんがな。」
一呼吸置き、近藤は続けた。
「勿論、来たいものだけでいい。命の心配だってある。家族とよく話し、決定しろ。出立は五日後だ。」
「なに言ってるんですかィ!行きますよ!」
そう言ったのは沖田。
それが合図だったかのように、俺も、と声が続く。
土方はそう言わなかったが、無論ついていくつもりでいたし、気分は高揚していた。
しかし_______…。
一人だけ肩を震わせ、顔を真っ白にさせながら虚空を見上げるように絶望の顔をしていたやつがいた。
三谷千里、その人だった。