第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
土方side
今思えば自分が伝えることのできない想いを総悟に叶えてほしいと思ったのかもしれない。
俺は胸を張ってミツバを守れる自信などなかったから。
けれど、総悟ならできると思っていたから。
心の底から二人を応援していた。
自分のエゴを乗せながら。
__________________涙目になりながら千里が自分の手を胸に当てる。
「そりゃあ胸はあんまないけど。そんなに言わなくてもいいと思わないですか?」
「…まぁ。」
「ちょっ…今の間は何ですか!?土方さんは信じてたのに!」
遂に大きな丸い瞳からぽろりと涙がつたう。
一粒では終わらず、ぽたぽたと着物にシミを作っていって。
「ちょっ。泣くなって。」
「お、女は適度に肉がある方が柔らかいって…。ど、どーせ私は腹筋割れてるし、紅だってつけないしっ…」
「待て待て待て。」
嗚咽をこらえようと掠れ掠れに続ける千里の言葉を遮り、土方は止めた。
けれど、彼女は思っていたより傷ついていたようで涙が留まることはない。
「そりゃ、ミツバさんや姉上は落ち着いてて守りたい女の子って感じだけどっ…!」
「落ち着けって。全く…お前にはお前の良さがあって総悟もわかってる。総悟は照れてそう言ってるだけだろ?」
「じゃ、じゃあ総ちゃんは…私のことどう思ってるんですか?」
「知らねーよそんなの。俺に聞くな。」
知ってるけど。
バレバレだけど。
一人そう思いながら未だ肩をすくめて涙を流している千里を見る。
どこが女らしくない、だよ。
どうみたって女じゃねぇか。
総悟も有ること無いこと言いやがって。
ここまで来るとさすがに千里が気の毒だ。
ため息をついた後、土方は慣れない手つきではあるが、彼女を撫でる。
「……土方さん?」
「千里……総悟に想いを伝えたらどうだ?」
上手くいくと思うぞ、そう続けて。
「そうかなぁ……。」
自信がないのか目を伏せながら千里は答える。その姿の彼女を土方は見ながら柔らかく微笑んだ。
「今日伝えればいいじゃないか?」
「……土方さんだって伝えれてないくせに。」
そう言う彼女もきっと土方のミツバに対する想いも見抜いてる。
「私……頑張る。」
呟くように彼女が言うのを見て、土方は微笑んだ。