第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
土方side
「近藤さん?」
動かなくなった近藤を土方は呼んだ。
近藤は夢から覚めたように、肩を大きく跳ねさせ、なんでもないと言って笑う。
「俺も酒を貰おうかな。」
続けてそう言い、銀時から酒を一杯貰う。
近藤は話し終えた、そういう態度なのだろう。
最後は……総悟か。
心中はなんとも言えない気持ちになりながら、自分はその続きを紡ごうと土方は思う。
ちょうど、自分達が江戸で一旗揚げようと決めた前の日のことを。
_______________いつもの場所でひとり剣をふっていた。
空は青く晴れ渡っており、太陽がさんさんと輝いている。
「土方さーん!」
少しして、初めて出会ったときとは比べ物にならないくらい綺麗になった千里が、現れた。
今日は薄い紫陽花の色をした着物を着ている。
「その格好で稽古する気か?」
初めてあったときは敬語を使った土方だが、今では千里の希望もあり、使っていない。名前も呼び捨てで呼んでいた。
「まさか、というか土方さんを呼びに来たんですよ。今から近藤さん、総ちゃん、私と姉上。それからミツバさんとでラーメン食べに行くんですけど。」
一緒にいきますよね?と選択肢を与えない声で問う。
やたらとミツバを強調したのが気にはなったが、断る理由もないので頷いた。
「土方さん、着替えてきたらどうですか?汗くさいと嫌われますよ。」
「誰にだ、今更。」
「分かってるくせに~。」
どうやら筒抜けであるらしいこの気持ちは、自分一人の問題ではない。
否定しておかなければならない。
ごほん、とわざとらしく土方は咳き込む。
「そっちはどうなんだ、相変わらずか?」
そう土方が言うと、千里はかぁっ、と頬を赤くし眉をつり上げ、
「土方さんに言われたくありません!ヘタレの癖に。」
「俺の話はしてねぇよ。なんだ、相変わらずフラれてんのか。」
「告白してもないのにフラれる分けないでしょっ!」
怒った猫のようにふーふーと震える千里。
「それにっ!この前、お前はそんなやんちゃくちゃで女っ気がないのに千鶴さんは綺麗だよなー。とか言われました!」
開き直るようにして叫べば、ぶわーと千里の瞳は膜が張られた。
今にもこぼれそうで、少しからかいすぎたと土方は反省する。