第3章 情報の共有 【Ⅱ】 消えたぬくもり
土方side
「そういえば、アイツには姉がいたのか。」
銀時は素朴な疑問を口にする。既に酒が入っているのかほろ酔いだ。
銀時は沖田の方を向いていたのだが、沖田は声にならないようで。
……仕方ねェよな。
独り言のように、誰にも聞こえない小さな声で呟く。
あれから、そよ姫誘拐から今日に至るまで千里について真選組は細かく調べた。
身辺をあらい、俺たちと別れた後の事も。
そこで浮上した彼女が攘夷浪士となったであろう理由。
それは俺たち真選組には裁けないものだった。
その事に千里の姉上は深く関わっていて。
「三つ年上の姉だよ。」
代わりに答えると銀時も察したのか、そうか、と言った。
___________________土方が近藤と沖田と出会ってすぐのこと。
「噂の新人さんですか?」
ひとりで稽古していると、扉の方から影が伸びているのに気がついた。
それと同時に声をかけられる。
声のした方に首を向けると、竹刀を持った少女がいた。
「私、千里って言うの。近藤さんから聞いてないですか?」
まだ沖田と同い年のようだが、幼いながらも敬語を使おうとする。
「千里って、三谷か?」
「そうそう!」
思い当たる名前を言えば、嬉しそうに年相応の笑顔を見せる。
「女でありながら姉上を守ろうとするなかなかの腕の持ち主だと、聞いてる。」
「うわぁ恥ずかしい…そんなに強くないよ。」
そう言いながらも満更でもないような顔をして、笑う。
「それで、何しに?」
もともと抱えていた疑問をつくと、
「一人で稽古。最近家業が波に乗ってきて忙しくなったの。それでなかなかここにこれなくて。」
成程、だから今まで会わなかったのか。
そして、そういえば、と土方は言葉を紡ぐ。
「沖田…先輩が拗ねていたのはそれが原因か…ですか。」
「へ!?なにその変な言葉!」
「…いや、沖田先輩がお前はここの後輩だから敬語を使えと。それがしきたりなら俺はお前…じゃない、あなたにも敬語を使わなくては。」
数秒間彼女は動かなかった。
しかし数秒後おもいっきり吹き出す。
「そ、それ、本気にしたの!?」
「え…はぁ…。」
「私はいーですよ…っぷ…くくっ…呼び捨てで、てかそんな決まりないし。」