第15章 偽りの愛
「きっ貴様ぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
突然の侵入者が目の前の主人の首を落とした。
そう皆が考えた。
黒い光を放つ重たそうな銃器の数々をこちらに向ける。
「貴方は」
「宗殿!来てくれたんですね!!!!」
美都の言葉を遮ったのは弟の紀一郎。
知り合いなの?
興奮した口ぶりから友好な関係がうかがえた。
「全く、そろそろ脱出してる頃だと思ったのによ。なに手間取ってんだテメェ。これじゃあ俺がこっそり爆弾をいろんなところに仕掛けた意味ねぇだろ。」
この刀も使う予定じゃなかったっつーのに。
愚痴るようにいう彼。
けれどその姿勢と視線は一切無駄なところがない。
けれどそんな彼を何者かと思うより先に出てきた感情は彼の語った言葉についての疑問だった。
"爆弾をいろんなところに仕掛けた"。
じゃあ彼がこの騒動を起こした張本人?
その彼が紀一郎の知り合いだった?
それは、つまり。
「おい、紀一郎の姉貴。」
皆が動揺した渦中にいる本人が言葉を放つ。
紀一郎の姉貴、が自分を指していることに気づいたのは少しあとだった。
返事が出来ないまま驚いていると、相手ももともと返事を期待していなかったのかそのまま続けた。
「この爆発は俺とお前の弟でたてた作戦だ。もう頭のいいと噂のお前ならわかるだろ。」
_____あぁ…っあぁ。
また引っ込みかけていた涙が溢れだす。
「あとから詳しく聞くだろうけどな。弟はずっと気がついてたんだよ。お前が危険な仕事をしてたことを。」
そして牙を研ぎ続けてきてた。
そう目の前の男が言葉を続けると同時に、自分の腕に手を乗せてきた紀一郎。
その力強さが言葉の証明だった。
「分かったんなら逃げろ!迷ってんじゃねぇ!どんなに苦しくてもどんなに後悔に苛まれても諦めんじゃねぇ!てめぇにはまだ弟がいる。
まだ守れるだろうが!!!!
守って守られてそうやってこれからは生きていきゃあなんとかなるんだよ!」
"まだ守れる"
どくんどくんと鼓動が早まる。
目の前がぱぁっと光輝いていく。
辺りが色づき、靄がゆっくりと晴れていく。
「ひとつだけ、お願いしたいことがある。」
気がつくと、そう言葉を紡いでいた。
相手の強さにかけてみようと思った。
もう一人の私の大切な人をこの人なら助けてくれると思った。