第15章 偽りの愛
銀時side
_____それはおかしい。
土方(アイツ)から見せてもらった資料には殺しの止まった時期はなかった。
つまり、そこから導き出される答えは……。
「きっと野菊が全てを請け負っていたのだと思います。」
鴨志田も同じことを考えていたのか、淀みのない悔しさの滲む口調で言葉を紡ぐ。涙が頬を伝った跡が家の電気によってはっきりと写し出された。
「怪我が治って遊郭に戻ると後ろにいる彼女たちが戸惑いを隠しきれない口調で頭である私に問うてきました。どうして仕事がないのか……。そして、どうして野菊は私が怪我した日からいないのか、と。」
銀時は瞳を鋭くして女たちを見つめる。
すると、茶色の髪をサイドに纏めた女は耐えきれなくなったのか、張り裂けそうな痛みを称えて叫んだ。
「おかしいんです!仕事の依頼が無くなるはずなんてない!それに、私たちは仕事をこなさなきゃ人質を殺すと脅されていた!けれど人質の生活は優遇されるようになった!」
こんなこと有り得ない!、と訴える女。
ついにその女もしゃっくりを上げて泣き始めてしまった。
回りの女も唇を噛んで、この不可解な事に対し肩を震わせている。
一方鴨志田は祈るように手を組み、その組まれた手に額をくっつけ、言った。
「……私たちは殺しという呪縛から解かれた筈でした。血のない日々は幸せな筈でした。けれど……。」
黒髪が、黒い瞳が、素っ気ない口調が。
「野菊は……どこにいってしまったんだろう。」
今まで誰にも言えなかった、誰にも相談することの出来なかった胸のしこり。
それを吐露すればするほど鴨志田の感情は濁流のように押し寄せる。
「幸せな日々を過ごせば過ごすほど野菊の事が頭をよぎるっ……あの子は、あの子はどこにいってしまったのか。幸せに過ごしているのか、それともっ……!!!!!」
考えたくなかった一つの可能性。
鴨志田たちは既にそれは正解だと気がついていた。
「……すべての殺しをあの子がこなしているんじゃないか。身を粉にして働いているんじゃないか。また涙を流してるんじゃないか。こんな風に人質が優遇されるようになったのは彼女が頼んだからじゃないか。」