第15章 偽りの愛
水仙は弾かれたように寝返りをうち、男の目に簪を刺す。虚をつかれた男は一瞬何が起こったのか分からない表情を浮かべて呆けた。
水仙は高らかに笑う。
「"窮鼠猫を噛む"、よ。アンタなんかに野菊をあげてやるもんですか。」
血色の失せている顔に紅の塗られた赤い唇は妖しさを倍増させて。
「きさ、貴様ァァァァァァッッ!!!!!」
男の右手にある小太刀がキラリと光り、赤い血を滴らせながら水仙目掛けて_____
「頭ァァァァァァッッッッ!!!!!」
張り裂けそうな叫びが響く。
もう野菊はなりふり構わなかった。
本能のままに。
足に力を込めて。
小太刀を持って。
痛みをすべて放り投げて。
持ちうるすべてを使って。
男に水仙を殺させまいと。
________男を、殺した。