第15章 偽りの愛
新八side
依頼のない、太陽が燦々と地面を照らす昼下がり。万事屋は各々好き勝手に今日を過ごしていた。
銀時はジャンプを読み、新八はお通ちゃんのCDを聞き、神楽は酢昆布を食べながらぼーっとする。 定春はそんなご主人達を呆れた目で一瞥したあと、自身もまた目を閉じ、好き勝手に寝ることにした。
少しして彼の瞳は重くなり、定春がウトウトし始め、心地よい夢の国に行こうとした______……その時。
ピンポーン、と万事屋のチャイムが軽やかに鳴った。定春の意識は覚醒し、「ワン!」とひとつ吠える。
ご主人である三人も気がついたようで新八が返事をしながら扉に向かっていった。
影がかすかに床に映り、お登勢ではないことが分かった新八は「どうぞ。」と一言言いつつ扉を横に開ける。
「うわっ……!?」
開けた瞬間、彼は目を見開き、情けない声を出した。しかしそれほど目の前の光景は彼にとって馴染みのない状況で。
「どうしたー!?客ならはいってもらえ!」
彼の挙動不審に気がついた銀時は大声で指示を出す。新八はその声を聞いて我に帰ったあと、おずおずと中へ入るようジェスチャーをした。
依頼人は軽く会釈し、中へ入っていく。
皆(みな)豊かな香と波打つ髪や真っ直ぐな髪を靡かせ、姿勢よく歩いていく。
新八はそんな彼女達を見送った。
なんの集団だ、これは。
華美な服装ではないのにも関わらず人目を惹き付ける美しさ。
美しい女でありながら常人ではない威圧感。
どう考えても普通じゃない女が5人。
彼女たちから少し遅れて銀時のいる部屋に入ると、同じことを思ったのだろう二人が不審そうに彼女達を眺めていた。
新八に視線を寄せ、知り合いか問うてくる。
この様子だと銀時や神楽の知り合いではないのだろう。
新八は静かに首をふり、彼女達を後ろから見つめた。
「ご用件は?」
銀時は何かを察したのかいつもと違い、真面目な声で内容を聞く。
危ない仕事なのだろうか?
そう思わざるを得ない。
少しの間、沈黙がその場を支配した。
そして躊躇いがちに真ん中に立っていた女が言葉を紡ぐ。
「秘密裏に探してほしい人がいるんです。でも本名はしらなくて……
"野菊"それが彼女の源氏名でした。」
_______三人は目を見開いた。
どこかで聞いたことのある名がここで紡がれた事に。