第13章 傷と罰
宗side
「吸血鬼かよ。」
「あら……今更?」
上目遣いで宗を誘う梔子。
この女は何度やっても足りないのか。
心のなかで悪態をつきながら、梔子の黒髪を掬い落とす。そして獲物を捉える虎のように瞳を細くし、ぐいっ、と彼女の髪を引っ張った。
「痛ッ……!」
微かな悲鳴が彼女からこぼれるが、宗は凍てつくような冷気を放ちながら彼女の耳元に唇を寄せた。梔子はその次に期待したのか、恐れたのか、びくりと肩を揺らす。
もっとも、彼女は前者の思いの方が強かったが。
しかし彼女の予想に反し、宗の唇から有無を言わせない圧力のある言葉が紡がれていった。
「お前が持っている情報を全て教えろ。……いや、お前が喋ってしまった情報だ。」
梔子の背筋に冷ややかなものが流れ、怯えるような視線が宗の下蔑む視線と重なる。
宗はそんな彼女の反応を面白がるように太ももに手を這わせ、徐々に欲情する彼女を眺めた。
「……イジワル。」
少しして、梔子が涙目で言葉を紡いだ。
拗ねるように彼女は肩をすくめると、パシッと乾いた音をたてながら宗の手を払いのける。
ほくそ微笑む宗をひとにらみしたあと、梔子は服を整えタバコをとりだし、火をつけた。
ふぅ、と紅が塗られた唇から白い息が吐き出され、煙がふわりと空気を色づける。
「銀時というオトコ、貴方と似ている臭いがしたのよ。」
「だから抱かれてみたかった、と?」
「言ったはずよ、ワタシは"美桜"と似た人に抱かれていたいの、ずっとね。そして彼に抱いて貰うには貴方の事を焦らしながら漏らす必要があった、それだけじゃない。」
それだけじゃねぇよ。
そう言いたいのをぐっと宗はこらえ、質問を重ねる。
「どこまでしゃべったんだ。」
「貴方のことより相棒ちゃんの質問が多かったかしら。」
紅い艶やかな唇が暗闇に慣れた瞳に妖しく浮かび上がる。
「ふふふ、あの人はだいぶサディストね。焦らすのが得意だった……。だから途中で記憶が飛びかけて……。」
「おい。」
「……嘘よぅ、覚えてるわ。ちょっとくらい妬いてくれたっていいじゃない。」
「誰にでも股開くクセによくいうぜ。」
「それがお仕事だもの。でもホントに好きなのは宗だけよ。」
「嘘をつけ、テメェが好きなのは"ミオウ"……、いや、もういい。」
続けろ、そういう風に手を振り続きを促す。