第13章 傷と罰
宗side
千里と銀時、そして神楽の心が少しだけ通ったその頃。
年期の入った今にも壊れそうな家にある男と女がいた。
その男である雨宮宗は乱れた服を整え、目の前の女を見つめる。
宗は自身と同じように服を乱し、しかしなお整えようとしない彼女に軽蔑の念を覚えつつ、言葉を紡いだ。
「これでよいか、梔子。」
すると病的な瞳を細め、ニヤリと微笑む目の前の女____梔子。
艶やかな唇。
くらりと目眩を覚えるような強い香り。
魅惑的な茶色の瞳と流れるような黒髪。
「せっかち、ね……。まだ余韻に浸っていたい梔子の気持ちは置いてきぼり?」
するりと宗の首に手を回し、誘うように首を傾ける梔子。長い睫毛がゆらりとゆれ、影を落とす胸が宗の目に入った。
宗は深くため息をつくと、彼女の頭を右手で強くひく。二人の距離が一気に近づき、唇が重なり、切ない声が漏れた。
宗は自分の舌を彼女のものと絡ませ、蹂躙するように生気と一緒に溺れさせようとする。
「……ん……は、っ……!」
荒い息遣いがその場を裂いていく。
宗は思考を止め、ただ相手の求めるまま舌を動かした。
少しして宗の方から唇を放す。
二人の間の糸はすぐにぶつりと切られ、名残惜しそうに梔子が目を潤ませた。
宗は顔をしかめ、梔子を睨む。
それに満足したのか、梔子は魅惑的に一度微笑んだあと、宗の顔を引き寄せ唇を重ねる。
梔子の細い指がいやらしく、誘うように宗の体をなぞった。
「……っく、やめろ。」
宗は口のなかを蠢く舌を押し返し、ひっぺはがす。口許には微かに血が浮かんだ。
その鉄臭いものを宗は嫌そうに拭い、梔子に視線を寄せた。
しかし梔子は同じように口元についた血をペロリと笑いながら舐める。
「……汚ねェ……。」
ちっ、と舌打ちをすると彼女はそんなことは意に介さいないのかニヤリと怪しげに口許を歪めた。
「汚なくなんかないわ。フフ、貴方の血だもの。知ってるでしょ?」
私貴方の血が好きなのよ。