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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第13章 傷と罰



千里side

何が起きているか、少し理解が遅れた。

……白夜叉様の腕のなかにいる。

最近宗以外の人に抱き締められてばかりいることを冷静に考えながら、彼の肩が震えていることに驚いていた。

泣いているわけではないだろう。

しかしそれは体の反応であって心はそうとは限らない。

分からない、今泣きたいのは自分の方だ。
勝手に着替え中に入ってきたと思ったら、呪いのような傷を彼に晒すという辱しめをうけて。

しかも"隠さなくていい"なんて。

_______けれど、どうしても今の彼を千里は突きはなそうとは思えなかった。

男を突き飛ばすなと調教されていたからではない。昨日の神威の時のように考えを巡らせたわけでもない。

ただ、自分が初めて見る彼の弱さが途方もなく愛しかった。

この人も"最愛"を亡くしたことは知っている。

それでもなお憎み、恨み、壊そうとしない彼に今までは苛立っていた。

どうしてそんな風に出来るの。
壊したいと思わないの。

「白夜叉、様……。」

______違う。

千里はゆっくりと彼の頭に手を伸ばした。

______彼は"強い"んだ。

柔らかな銀色の髪が千里の指に絡まる。ふわふわとした彼の毛は余程癖っ毛なのか、千里が触る度に形を変えた。

まだ彼は動かない。

金縛りに合ったかのように。

彼の心のうちをすべて理解することは千里には不可能だ。
けれど、通ずるものがあるのも確かで。

こんなとき、自分なら何て言ってほしい?
こんなとき、あの人なら____……宗なら何て言う?

そんなことを考えながら、千里はゆっくりと言葉を紡いだ。


「忘れないで。」


我ながら冷たい声だった。
けれどそれが悲壮な感情を押し殺すためだと銀時も理解したのだろう。

小さく肩を跳ねさせたあと、腕に力を込めた。

分かっている。
これも裏切りだ。
けれどわかってほしい。
"最愛"を失った哀しみを。

そしてきっとここにいるのが宗でも、黙って彼のそばにいたはずだ。
彼の感情が平らに戻るまで。

「悪ィ……。」

熱っぽい掠れた声。
千里はそれに答えるように二度彼の頭を優しく叩いた。




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