第13章 傷と罰
銀時side
女の真っ白な肌に浮かぶおぞましい火傷の跡。
真っ直ぐな一本の線のように伸びるソレは、銀時の心を締め付けた。
故意的に作られた傷。
痛みつけるためだけに残された呪い。
喉を引っ掻き、心を刺し続け、濁流のような嫌悪が銀時を襲った。
_______この傷は、消えない。
直感的に感じる銀時。
自分の体に残っている傷とは比べ物にならない、生々しい傷。
膿み、引っ掻き、何度も何度も皮膚を焼き付けなければこんな風には……。
「……っ……!」
男ならまだましだ。
けど、コイツは。
「し、白夜叉……さ、ま。」
そのとき、か細い震える声が神経質にはりつめていた銀時の耳に届いた。
ハッとして顔をあげれば、瞳一杯に涙をためて懇願するような表情を浮かべている千里がいる。
「……み、見ないで……くださいっ……!」
肩を震わせながら、何とかその傷を隠そうとする千里。着物を手繰りよそうとする手はカタカタと大きく震えていて。
「こんなモノっ……見なくていいんですっ……!見ないでっ……!」
遂に、ほろりと一粒の涙が彼女の瞳から溢れた。
「こんなっ……汚いっ……欲にまみれた傷なんてっ……。」
嗚咽しながら言葉を紡ぐ彼女。
その手は傷に向き、擦りとるような仕草をした。
「ばっ……!やめろ!」
銀時が慌てて止めにはいる。
か細い右手首が銀時の大きな手によって行き場を失った。
それでも抵抗するようにいやいやと千里は首を横に降る。
はじめてみる、明らかな怖がり。
どこでつけられた、とか。
誰にやられた、とか。
こんなモノ資料にはなかった、とか。
聞きたいことは山ほどあった。
しかし銀時は何とか自制心を保ち、諭すように、それでいて行動を阻むような鋭い声で言葉を放つ。
「触るな!傷が悪化する!」
すると彼女は涙で溢れた瞳に怒りを宿らせ、銀時を睨み付けた。
どこまでも憎しみを感じさせるその瞳に銀時の背筋は震える。
「血が出ようが、皮がめくれようが関係ないっ!だってどうせ消えないんだもの!消せないんだもの!いつまでもいつまでも呪縛みたいに残るのよ!この憎たらしい傷はっ……消えてくれない!」
獣が最期に力を振り絞って矜持を示すように。
それでいて壊れたガラクタのように。
千里は泣き叫ぶ。