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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第12章 地球の友達



神楽side

拾われた先で愛を知って。
ずっと一緒にいたいと思った。

それでも現に今、ホントウの願いを圧し殺して兄と戦おうとする自分もいる。

兄を取り戻すために戦うこととはいえ。

彼女も同じなんだ、きっと。

サドのこともマヨのこともゴリラのことも、大切で仕方なくて。

ただどちらかしか今の自分には選択肢がなくて。

選ばなきゃいけなくて。

神楽は喉に込み上げてくる熱いものを押し退けるように、目尻に力を込めた。

そして祈りにも似た想いで、自分に言い聞かせるように、言葉を紡ぐ。

「……つか、きっと……。」

掠れた声が神楽にはやけに凛として聞こえた気がした。
隙間から入ってくる風が神楽のオレンジ色の髪の毛を揺らし、暖かさで包む。

千里は潤んだ瞳で神楽を見ながら、神楽の次の言葉を待っていた。

「いつか、きっと来るアル……。」

神楽はまぶたの裏に兄の姿と父の姿を思い描く。

「いつかきっと……皆で……。」

脳裏によみがえるのは今のもうひとつの家族。


「笑い合うことができるアルよな。」


神楽のこらえていた目尻からポロリと一粒の涙が溢れ出した。白磁の頬をつたって一筋の跡を残す。

そんな神楽を驚きの瞳で見返し、自身の瞳を潤ませる千里。

二人の間に初めて糸が通る。

共通するところが重なりあい、浮き彫りになり、柔らかな光を纏って。

届かない願いを胸に秘め、今ある幸せを離したくなくて、出来ることなら両方と手を取り合いたい。

「……そう、ね。皆で……いつか……。」

千里は肩を震わせ、俯きながら一つ一つ確認するように言葉を紡ぐ。

神楽もそれを聞きながら、微笑んだ。

叶わない願いかもしれない。
あのバカ兄貴には勝てないかもしれない。

それでも諦めたくない。

「……仕方ないアル……許すネ。」

「へ?」

「そよちゃんを誘拐したことアル。」

ふんっとさっきとは打って変わって尊大な口調になる神楽。
ポカンと呆けた表情を浮かべる千里。

二人の間になんとも言えない不思議な空気が流れた。笑いをこらえながら、涙をこらえながら、楽しくてワクワクする気持ちを押さえる。

最初に吹き出したのは千里だった。
ぷっ、と吹き出した後、心の底から楽しそうにあははは!と声に出して笑う。



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