第12章 地球の友達
神楽side
自嘲気味に神楽は笑い、今度は彼女に問いを投げ返した。
「お前は、今日は何しに来たアルか。」
すると先程の神楽のように肩を下げる千里。その顔には翳りが降りている。
窓からはいる優しい光が千里の睫毛を儚気に浮かべさせ、まるで空気に溶けてしまいそうに揺れた。
そして神楽は何も言わない千里から視線を外し、目の前のふすまを凝視し、言う。
「サド……沖田の事じゃないアルか?」
当たりだったのか、千里は大きく肩を跳ねさせ一度神楽を見る。
しかしすぐに俯き、何度か言葉を口にしようと唇を動かしたが、声にはならなくて。
心のなかに渦巻く煩悶が伝わってくるようで。
神楽は言葉を選びながら、千里に投げ掛けた。
「サドなら……元気アルよ。」
瞬間、窓から注ぐ光がさらに強くなる。
雲の切れ間から太陽が現れたのだろう。
「……そう。」
小さな、小さな一言が、かろうじて神楽に届いた。感情を圧し殺した冷静な声は逆に高ぶりを感じさせる。
そういうことだったアルか……。
自分は彼女の何を見ていたのだろう。
そよ姫を殺さなかった人が、あんな風に挑発にのって会いに来るような人が、拳だけで神楽と戦ってくれた人が、どうして脆いと気がつかなかったんだろう。
熱くなっていたときには分からなかった。
感情を消そうとする彼女のホントウの姿。
本心、建前、笑顔、涙。
苦しみ、哀しみ、虚偽、真実。
強がり、それに気がつくには少々遅い気がした。
本当は今みたいに何度も声に出したい願いを圧し殺してきたんだろう。
___________自分みたいに。
もう一度家族とやり直したい。
パピーがいて、兄ちゃんがいて。
一緒にご飯食べて、一緒に話して。
当たり前の温もりを、取り戻せたらどれだけいいだろう。
でもそんな願い言えっこなくて。
それでも私は銀ちゃんに、新八に会った。
楽しさを知った。そこだけしか感じることのできない暖かさを知った。
それと同じなんじゃないか。
コイツは出会った人が私と違っただけ。
拾われた先が幸せなのは同じなんじゃないか。