第12章 地球の友達
千里side
ひとしきりごちゃごちゃと言い合い、欠片を喧嘩しながら片付ける二人。
その間には気まずさはもう、存在していなかった。
千里といえば、着物は脱ぐしかなかったので今は勝手に神楽が持ってきた着物を着ている。
おそらく銀時のものだと予測をつけ、少々嫌悪感が襲うが、つっけんどんにも突き出された着物を断ることなど出来なかった。
神楽の瞳が必死に語りかけてくるようにしか、見えなくて。
「サイズ、でかすぎたアルな。」
「仕方ないでしょ。男のやつだし、しかも白夜叉様はがたいイイし。」
ぺろりとうでを腕を持ち上げれば、軽く着物が舞う。
千里の着物は乾かしている途中だ。着物の色は紺色だったのでお茶の色は目立たない。洗う必要はないと千里が言い、今に至る。
「ねぇ……アナタ、名前は?」
ポツリと思い出したように聞く千里。
何となく名前は聞いてはいるが、確かめたかったのだ。
神楽は不思議そうに千里をみつめた。アクアマリンのような碧い瞳が透き通る。
交わる視線に以前のような激しいものはなく、漂う空気は穏やかだ。
彼女は少し躊躇った後、さくらんぼ色の唇を動かして、
「……神楽アル。」
と、言葉を紡ぐ。
千里は少し思案し、頭の中に思い浮かんだことを声に出した。
「神威と同じ字なの?」
そう問えば、弱々しく肩を下げながらもこくりと頷く。
そんな表情を見て、千里の表情にも悲しみが広がった。
「神威のコト、知りたい?」
ふと気がつけば、そんなことを口に出してしまっていた。お節介、そんなのは百も承知で 。放っておけなくて。
神楽は目を見開き、驚きで一杯の表情を浮かべた。しかしすぐ、困ったように眉を寄せた。
聞くか、聞かないか。彼女の頭の中に二卓の選択肢が揺れ動いているのが、千里にも伝わった。
「……聞かない……アル。」
少しして、彼女は突然言った。
間は空きつつも、はっきりとした声で。
「いいの?」
千里は聞き返す。
しかし神楽は今度は清々しい顔で首を横にふった。その顔は信念を貫く神威の顔を彷彿とさせる。
「バカ兄貴は、いつか倒す予定アル。」
その時、言い訳を聞いてやってもいい。
神楽は寂しそうに言葉を放った。