第12章 地球の友達
千里side
気まずい……マジで気まずい。
毒を警戒することも忘れ、千里はズズっとはしたなく音をたてながらお茶を喉に入れた。
乾きっぱなしな喉に潤いが広がっていく。
そうじゃん、この二人一緒にすんでるんだった。忘れてた……。
小さく心のなかでため息をつく。
白夜叉に会うつもりが子兎と対面。
しかも鬼のような強さを秘めた子兎。
暖かな出されたお茶から視線をはずさないふりをして、彼女を盗み見る。
するとぱっちり目があった。
彼女は驚いたように目を見開き、長いまつげが震え、ばつの悪そうな顔をしたあと、そっぽを向く。
瞬間、靡くオレンジ色の髪が、昨日の神威と重なった。
そういやこの二人……兄妹だっけ……。
神威の話から類推すると、きっとここ何年かは会っていないはず。
そう思うと心のなかに鈍い痛みが広がる。
神威は彼女のことを出来の悪い妹だと言っていた。
でもそれは、とても幸せな事。
そういう風に悪態をつけるのも、そういう風に嫌な顔して家族のことを悪く言えるのも。
全部、相手が元気に過ごしてるから言えるんだ。
本当に死んでしまったら、自分のせいで死んでしまったとしたらなおさら。
そんな風に悪くは言えない。
話題にだって出したくない。
そんなことしたら、苦しくて痛いから。
「……オイお前。」
すると、神楽が言葉を千里にかけた。
その声にハッとして背筋を凍らせ、声の主を見れば、眉を寄せて困ったような険しい顔を浮かべている。
「うちの茶まずかったアルか。」
「へ?」
彼女の指さした方を見れば、そこにはこぼれたお茶が私の太ももから膝にかけて伝っていた。湯気をたてて、べっちょりと着物が濡れている。考え事をしていたせいで手に力がこもっていなかったのだろう。カップは傾いていて。
「うわっっ!?」
ガタッと激しく立ち上がれば、力のこもっていなかった手から今度はカップごと落ちる。
ガチャン!!!!
「きゃっ!」
「うわっ!」
千里と神楽の声が重なった。
足元には粉々になったカップ。
「ご、ごめっ……つーか熱っ!」
熱い熱い熱い!!!
「ちょ、お前動くなヨ!」
「ちょ、神威の妹さんこそ動かないでよ!欠片が危ないから!」
「夜兎は治癒力は抜群ネ!気にするナ!」
「気にするわっ!」