第12章 地球の友達
千里side
外出を許されている千里は、目の前の看板を見上げた。
我ながら最近変だ。
……ホント、総ちゃんには激甘だなぁ、私。
けれど近づくのが危ないのは分かってる。
だからここに来たのだ。
気になる。気になってしまうのだ。
怪我の具合は昨日結局わからなかった。
宗に後ろめたさが無いといったら嘘になる。
けれど千里は宗の秘密主義にやきもちをやいているといえばそれまでなのだ。
自分の知らないところで宗は活動を続けている。
宗は外にたくさん情報屋がいて、関係を持ってる女までいる。
きっと美人で、男を口説くテクニックのひとつやふたつ、持っている女ばかりなんだろう。
自分が利用されているとはしらず、簡単に股を開くようなそんな下品な女。
そんな人と宗が一緒にいることに腹をたてていたのも事実だ。
自分はそういうことはしたくはないが、宗に対する秘密だってあっても良いはずで。
当て付けに近いけれど……。
とにかく、と千里は気を引きしめて上の看板をもう一度睨み付けた。
ここに来るのは久方ぶりか。
じゃり、と地面が彼女の動きに合わせて唸る。そして静かに、一人だけに聞こえる声で言葉を紡いだ。
「……さて、私もできることをしよう。」
千里は階段に向かっていく。
彼女が先程まで立っていたところの目の前にはのれんがかけられていて。風にゆらゆらと
ゆれていた。
カツンカツンと千里は階段を背筋を伸ばしながら上っていく。
頬を風が撫でるが、それさえも振り払うように千里は目の前の扉を見つめた。
そして覚悟を決めたように、一気に扉を横に開け、
「ごめんください、白夜叉様はご在宅ですか。」
と、凛とした声で言葉を放った。
しかし返ってきたのは男の声でもなければ、幼さの残る可憐な声。
「銀ちゃんなら……どっかに行ってるアルよ。……お茶でも飲むアルか、大罪人。」