第12章 地球の友達
銀時side
土方の瞳がどこか遠くを見ているように揺れた。
苦しくてたまらないはずだ。あの頃切磋琢磨して一緒に強くなった仲間が、その技術によって苦しみ、人を殺し続けていたことに。
その技術を持っていたから故に、体だけではなく心も剥ぎ取られるような人殺しをし続けていたことに。
「……笑ってたんだがな…。」
ポツリと土方は言葉を紡いだ。
その言葉には哀しみと切なさと、そして過去を慈しむような色を滲ませている。
「強くなる度に…教えてもらったことが出来た度に…本当に嬉しそうに…。」
土方は声をつまらせ、鋭い瞳に悲しさが翳る。
「あんな…本当に苦しいときに……あんな…戦いの最中に……冷たい笑いをするやつじゃなかったのに……っ……。」
銀時は静かにその場に座った。
彼女が真選組の近くに訪れていたことはあのあと神楽から聞いた。
つまり彼女は神威に会いに来たのではなく、沖田の様子を見に行ったのだ。
それを土方に言うべきか言わぬべきか。
言えるわけねぇ…か。
幸い、神楽は沖田には言っていないと言った。こんなことが彼の耳に入ったら次こそ彼女たちに刀が触れなくなる。
捕まえるための刀さえ触れなくなる。
「土方。」
銀時は目の前で悔しさをにじませる彼の名を呼んだ。
彼はこちらをしっかりと見る。
銀時は彼の瞳の奥にまだ意志が残っていることを確認し、言葉を紡いだ。
「負けんなよ。」
土方は驚いたのか目を見開く。
けれどこれは銀時の本心だった。
いつも憎まれ口を叩き合ってはいるが、コイツは俺と似ているところがある。片方を救うために片方を捨てなければいけなかった俺は両方を失った。
だからわかる、不器用なこと。
守るために自分を犠牲にすること。
そして自分を犠牲にしたことに気がつかないこと。
だから______……。
「お前は間違ってねェよ。アイツを取り戻そうとすることはお前らのエゴでも欲深い願望でもねぇ。
正しいことだ。」
土方の肩が微かに震えた。
がらにもないことを言ってることは分かってる。けれどこれは言わなければ伝わらない。
すると土方はまた口角を上げ、言葉を紡ぐ。
「お前ェがそんなこと言うなんて雪でも降るか?」
「安心しろ、二度と言わねぇから。」
だからどうか______……俺とは違う未来になりますように。