第12章 地球の友達
銀時side
少しだけ沈黙がその場を支配した。
お互い視線をそらさず、譲らないまま。
そうして結局折れたのは、土方だった。
「一年前だ。」
斜め下にある書類を土方が腰を屈めて取る。
そこには豪華とは言い難い、粗末な家が写っていた。
「ここが……。」
「そう、"夕時雨"だ。」
土方はゆっくりと語り出す。
「設立はおよそ春雨発足時。しかし一般的には公開されておらず、ある特定の者しか立ち入ることができない。中にいるのは遊女たち。……遊ぶのは春雨の中でも幹部、それか幹部が許したものだけ。」
粗末な家、中にいるのは気品に溢れた遊女。
髪を垂らし、紅を塗り、客に酒を次ぐ。
そして_______。
「"普通"なら……抱いて終わり。」
自分で言葉を放ってから、自嘲的な笑みを銀時は溢した。
察しのいい銀時は次に土方が紡ぐ言葉を予測できる。
千里の強さの本質。
根は土方と共に近藤のところで稽古してきたところにあるだろう。
しかし花開いたのはこの時期のはずだ。
「組織に厄介者は必ずいる……春雨も同じだった。」
厄介者、それはトップの思い通りに動かないモノ。そしてトップを凪ぎ払うほどの権力を持っているモノ。
「それを、静かに殺すのが……あそこにいた数人の遊女の仕事だった。」
銀時は心の中でため息をついた。
神威はそれにぴったり当てはまる。
あの奔放な性格と、戦乱や血を求める性は厄介者でしかないだろう。
「そして……千里は……。」
土方はもう一枚紙を取り出す。
そこには隠しどられたのか、上質な着物を着た女が写っていた。
その背中が、後ろ姿が、うなじが、千里だということを示していて。
「一番優秀な暗殺者(アサシン)だった。」
事務的な口調で話す土方。
感情を圧し殺した声に銀時はちくりと胸を痛める。
「アイツがいた時期、春雨の幹部が一番消えてる……まぁ、全部が全部とは限らないが……アイツの腕はその中じゃずば抜けただろうし、アイツがかけていたものを考えれば、90%はアイツの手によって死んでいるはずだ。」
さすがに殺した人の名前までは分からなかったが。
と、土方は肩を落とした。