第11章 それは慟哭の鐘
千里side
悪いのは神威はない。
これだけははっきり言える。
だって神威は私の境遇を知らなかったんだから。
だって神威はいつもみたいに自分を殺してくる敵をあしらっただけだから。
そんな彼を恨むのは筋違いだ。
_______例え忘れられないほど自分が苦しんでても。
「やっぱ君は強いや。」
神威が腕をほどき、彼女を解放した。
千里を包んでいたぬくもりが空気に儚く溶けていく。
その中でも彼女は眉を切なそうに寄せながら、言葉を放った。
「違うよ神威。」
千里は自分の体をかき集めるように自分の肩を抱いた。肩にある火傷の跡を彼に見せたくなくて。
「私はつよくなんかない。」
瞳を閉じれば浮かぶ大切な人。
耳をすませば自分の名をよぶ大切な人。
なくしたくなかった、だから強さを求めた。
けど、それは強さじゃなかった。
「……分からないな。君はどうして自分をそこまでおとしめるの?君は強いよ、俺が言うんだから。」
「腕力とか決断力とかそんじょそこらの女に負けない自信はあるよ。修羅場をぬけた数が違う。」
でもね、と言葉を続けながら千里は潤んだ瞳で彼を見つめた。
「大切な人を悲しませる強さは……強さじゃないんだよ。」
そう、今も。
私は強くないままだ。
「神威にも……いつか、いつかきっと分かるよ。」
大切なものはなくしてから大切さに気づくと言うけれど、私は少し違うと思う。
大切なものをなくしてから自分の愚かさに気が付くのだ。
そして嘆き、自分の無力さを知り、大切なものを取り戻そうとして取り戻せなくて、そこで気がつく。
神威は瞳を細めた。苛立っているのか、その瞳は冷たい。
でもそれでもいいと千里は思う。
彼には起爆剤がこの地球に存在する。
それでいいのだ。
「神威……。」
千里は口角をあげ、神威を冷たい目で見返した。
「さよなら。」
そして背を向ける。
神威とはまたいつか会う気がしたが、「またね。」とは敢えて言わなかった。
いつ死ぬか分からない身だ。
修羅の道を選んだもの同士、それは理解している。
「千里。」
しかし神威は彼女の名を呼んだ。
千里はぴたりと歩みを止め、黒髪をなびかせ振り替える。
そして、神威の手が彼女の腕を掴み_______