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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第11章 それは慟哭の鐘



千里side

「相変わらず、すべすべ。」

そう言って、指で一つ一つ確かめるように撫で続ける神威。千里は抵抗ひとつせずに大人しくその行為を受け入れた。

「イヤじゃないの?」

神威は可笑しそうに聞く。
しかし彼女は反抗的な瞳で言葉を紡いだ。

「ある徹底的な根拠が私にはあるの。アンタが私を殺さない根拠がね……いや、根拠じゃない。事実だわ。」

フッ、と不敵に千里は笑う。

なんのことかわからない神威は首をかしげた。年よりも小さく見えるその童顔がまたさらに幼さを帯びる。

対して、千里は少しだけ"雪螢"に力を込めた。


__________この刀が反応しなかったんだ。

神威に蹴りを浴びせられかけた時、この刀は反応しなかった。千里がその刀を呼ばなかったとしても、本当の危機だと刀が見抜いたとき、勝手にこの刀は作用するはずなのだ。
現に、桂が宗を若干とはいえ本気で襲ったとき"雨龍"は反応した。

もし神威が本気で千里を殺したかったのなら真っ先にこの刀が反応しているはずなのだ。そして彼が近づいた瞬間に勝手に動き出しただろう。
しかし実際のところこの刀は千里が呼んだとき以外反応していない。

神威に本気の殺意がない証拠だ。


「まぁいいや。」

千里がそんな風に思案していると、神威は考えることに飽きたのか、急に千里を抱き寄せた。
ビックリした千里は反射的に体をこわばらせるが、彼の逞しい腕がそれさえも包み込むように彼女を抱く。

「な、に……。」

途切れ途切れにそう問えば、神威は千里の頭を撫でながら言葉を紡いだ。

「んー……俺、君に謝らなきゃいけないことたくさんあったみたいだからさ。」

瞬間、彼女の肩がびくりと跳ねる。
神威はそれに気がつきつつも言葉を続けた。

「実はネックレスを無くしちゃってね……また貰おうと思ってさ、君の前いた拠点"夕時雨"を久しぶりに探したんだ。」

そしたらさ、と神威がため息をつきながら言う。

「もうない、って阿伏……部下が言うんだよ。何でって感じじゃん?」

「……。」

「調べてみたら、一夜にして主人もそこで働いてた人も死体になってたっていうんだよ。けど遊女は一人を除いて皆生残が確認されてる……不思議な出来事だ。」

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