第7章 廻り始めた歯車
千里side
「はい、これ本来なら死んだね。」
上から白目を向いたまま倒れている男たちに向かって吐き捨て、宗の隣に座り直す。
もちろん、相手を投げるときに隠しながら投げたくないで作った糸の檻は抜いた。
「いい動きだ。」
「どーも。」
桂は本心で言っているようだったので、頭を軽く下げる。
回りの男たちは色々なことを察したようで、気絶した男を回収した人たち以外、何も言わないし、動かない。
成功……かな。
かっとなって動いてしまったのは反省点だが、これでやっと実力は認められた。
それは心から嬉しく思う。
女だからといって、刀を握らない。
内で男を支える。
それは……古くさい。
そんな千里の思いを感じ取った宗は、代弁するように語る。
「確かにこいつは短気ですが、腕だけは信用できますよ。まぁ逆に言えばそれを従えている俺も……ってことですけど。」
部下達が肩を縮める。
目の前で見せられた現実を受け入れた印だった。
これで逆らえば千里が牙を剥くことが目に見えていることもあるのだろうが。
「ったく。俺は分かっていたというのに。」
「悪いな、桂。いきなりの裏切りは困る。信用してもらえないと。」
悪びれず言う宗。しかし反感を表すものはもういない。異議を申す必要がないからだ。
ちらりと部下達を見れば、びくりと肩を震わせ怯えていた。
やりすぎたかな、そんな思いが心をよぎる。
「千里、ひとついいか。」
少しショックを受けながら、心を落ち着かせていると、桂が疑問をぶつけてきた。
「なに。」と冷たく返せば興味津々に聞いてくる。
「君はその技術をどこで?」
その時、心のなかに大きなおもりが載った気がした。
ヒタヒタと黒い闇が迫ってくるかのよう。
「……生きるために、学んだのよ。」
感情を押し込むようにいえば、桂はそれ以上詮索することはせず、ただ頷いた。
彼も思うところがあり、確認を取っただけなのだろう。
距離感の問題だ。
「さて、本題に入ろうか。」
桂は何もなかったように、話し始めた。