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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第7章 廻り始めた歯車



千里side

笠を深くかぶり、怪しまれないように速度を落とさず歩く。

宗とは距離を少し離して、二人で襟元の通信機で異常がないか伝え合った。

きょろきょろしない、きょろきょろしない。

宗に言われたことを心の中で何度も唱える。
もうすでに自分は顔が割れている。

見つかったら斬られるのは明白だ。

うるさい心臓を押さえつけるように深呼吸して、また歩き出す。



「一週間ぶりだな!宗。」

「よぅ、ヅラ。」

何事もなく約束の場所につくと、中央に桂が座っていた。そして宗は先程言っていたように"ヅラ"呼びだ。

「ヅラじゃない!桂だ!」

「もはやお約束なのか。」

宗が嘲笑うように鼻であしらえば、桂の後ろにいる部下たちが怒りを露にする。
くちばしを持つ謎のマスコットがなだめているのが見えた。

「気が早ぇ部下たちだな。」

「それほど私が信頼されているとは思わないかな。」

「もしそれが信頼の指標ならこっちのが勝ってるけどな。……千里、刀を納めろ。」

その声にぎくりと千里が反応する。
厳しい瞳を桂に向けた。

「それならそっちの部下の人も刀を納めてよ。」

ふて腐れたように刀から手を離せば、相手もゆっくり刀から手を離す。

相変わらず信頼もなにもない関係に虫酸が走った。

「千里すまないな。少し細かすぎるんだ、うちの仲間はな。」

「調教でもしたら?躾しないといつか牙を剥かれるよ。」

「それは愉快な冗談だ。」

宗は止めてこない。
それならば止める気などない。
やはりこいつらは宗と私をなめている。

「刀で一騎討ちでもする?負ける気しないんだけど。」

したたかに、獣が獲物を見つけたように笑うと、一人の男が痺れを切らしたのか桂に視線を送る。

桂は頷かない。

もう火はついている。
ならば、油でも注げばいい。

「やり過ぎるなよ。」

小さな声で宗が耳打ちする。
千里はそれに頷くと、言葉を発した。

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