第7章 廻り始めた歯車
沖田side
「今の……彼の居場所をご存知ですか。」
途切れ途切れに言えば、立花は首を横にふった。
「彼の名前を知ったのも偶然なんですよ。おしゃべりはしてくれますが、自分に関することは一言も言いませんでした。」
「そう、ですか。」
山崎はメモを取る手を止める。
それが、終わりの合図だった。
二人は立花に礼を言い、店を出た。
立花は何かを言いたそうに一度彼らを引き留めたが、それ以上はなにも言わなかった。
ただ、頭を下げた。
その行動の意味も立花の思うところも、沖田には理解できる。
宗を殺さないでほしいと言う、願いなのだろうと予測がつく。
しかしそれが難しいことも立花は知っており、だからなにも言わなかったことも、分かっていた。
「山崎。」
沖田は隣にいる空気を読んでくれた彼の名を読んだ。
彼はびくりと肩を揺らし、地面に向かっていた視線をこちらに移す。
「着物屋を調べてくれ、江戸中全部だ。」
彼が千里を心のそこから大切にしているのなら、行動が読める。
彼の想いを信じよう。
「千里は綺麗な着物が好きだった。あのときは男物だったから見落としてたが、もしかしたら女物は雨宮が用意しているかもしれねェ。」
俺だったら、そうする。
もしかしたら似ているのかもしれない。
自分と雨宮は。
そんな沖田の意図を読んだのか、山崎は「はい!」と返事をし、駆けていく。
出会った頃はただのチンピラだった山崎は、今じゃ頼れる仲間だ。
「さて……。」
自分にはできないことがある。
今の捜査ははっきりいって自分は足手まといだ。
けれど逆に考えてみよう。
自分と似ている思考を持つのなら、これから何をするか。
______ひとつしかねぇ。
捜査では雨宮は千里としか繋がりがない。けれど賢い頭ならそれではいけないことは分かっているはずだ。
武器の調達は?
情報収集は?
足りない部分を補うには、どうすればよいか。かつ彼の目的を受け入れ、信頼とは言えなくても信用できる腕のあるものは?
「テメェか、桂。」
沖田は睨み付けるように、お尋ね者の名を呼んだ。