• テキストサイズ

儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第7章 廻り始めた歯車



沖田side

「今の……彼の居場所をご存知ですか。」

途切れ途切れに言えば、立花は首を横にふった。

「彼の名前を知ったのも偶然なんですよ。おしゃべりはしてくれますが、自分に関することは一言も言いませんでした。」

「そう、ですか。」

山崎はメモを取る手を止める。
それが、終わりの合図だった。




二人は立花に礼を言い、店を出た。
立花は何かを言いたそうに一度彼らを引き留めたが、それ以上はなにも言わなかった。

ただ、頭を下げた。

その行動の意味も立花の思うところも、沖田には理解できる。
宗を殺さないでほしいと言う、願いなのだろうと予測がつく。

しかしそれが難しいことも立花は知っており、だからなにも言わなかったことも、分かっていた。

「山崎。」

沖田は隣にいる空気を読んでくれた彼の名を読んだ。
彼はびくりと肩を揺らし、地面に向かっていた視線をこちらに移す。

「着物屋を調べてくれ、江戸中全部だ。」

彼が千里を心のそこから大切にしているのなら、行動が読める。
彼の想いを信じよう。

「千里は綺麗な着物が好きだった。あのときは男物だったから見落としてたが、もしかしたら女物は雨宮が用意しているかもしれねェ。」

俺だったら、そうする。

もしかしたら似ているのかもしれない。
自分と雨宮は。

そんな沖田の意図を読んだのか、山崎は「はい!」と返事をし、駆けていく。

出会った頃はただのチンピラだった山崎は、今じゃ頼れる仲間だ。

「さて……。」

自分にはできないことがある。
今の捜査ははっきりいって自分は足手まといだ。

けれど逆に考えてみよう。
自分と似ている思考を持つのなら、これから何をするか。

______ひとつしかねぇ。

捜査では雨宮は千里としか繋がりがない。けれど賢い頭ならそれではいけないことは分かっているはずだ。

武器の調達は?
情報収集は?

足りない部分を補うには、どうすればよいか。かつ彼の目的を受け入れ、信頼とは言えなくても信用できる腕のあるものは?

「テメェか、桂。」

沖田は睨み付けるように、お尋ね者の名を呼んだ。


/ 273ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp